研究課題/領域番号 |
20K18794
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
小林 冴子 鶴見大学, 歯学部, 助教 (90804534)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | エナメル質 / 幼若エナメル質 / エナメル芽細胞 / 生理活性物質 / TGF-β / 上皮間葉転換 |
研究実績の概要 |
本研究は歯牙発生や形成において重要な役割を担う生理活性物質の一つであるTransforming growth factor-β(TGF-β)に注目し、エナメル質形成過程における TGF-βの役割と機能について解明することを目的とする。複雑なTGF-βの動態を理解することを通じ、歯牙硬組織形成のメカニズムの知見を得るとともに、新た な歯科再生医療技術の構築を目指すものである。 マウスおよびブタ永久歯歯胚より得られた幼若エナメル試料中にて、哺乳類で知られている3種のTGF-βアイソフォーム(TGF-β1,β2,β3がそれぞれ検出されたが、遺伝子発現時期、発現量およびタンパク質レベルでの定量や活性レベル測定には差があり、アイソフォーム毎に異なる様相を呈した。 本研究ではこれまでにTGF-βによるアポトーシス誘導の可能性について示し、その影響はβ3添加で最も大きく、ついでβ2、β1となる実験結果を得ている。またTGF-βのさらなる役割解明のため、エナメル上皮細胞の上皮間葉転換(EMT)に及ぼすTGF-βアイソフォーム間の応答性の違いについて検証を行った。マウスエナメル上皮細胞株(mHAT9d)を用いた実験では、TGF-β1およびβ3添加下での培養でEMTを生じたが、TGF-β2では観察されなかった。 これらのサイトカインはTGFBR1、2という共通の受容体に結合して様々な生理作用を調整している。各アイソフォームで異なる役割を持つ可能性について証明するためには、エナメル芽細胞への影響やシグナル伝達領域での作用について、さらなる検証が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響により研究体制が整うまでに時間がかかり、初年度の実験開始まで期間を要した。本年は当初予定していた細胞実験を遂行することが出来たが、結果の再現性、精確性を求めるためさらなる追加実験は不可欠であり、進捗はやや遅れている状況といえる。具体的にはmHAT9d細胞を用いたEMTの観察、およびTGFBR1、2に誘導されるシグナル伝達について、TGF-βアイソフォーム間の影響の差を検証する。
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今後の研究の推進方策 |
TGF-βアイソフォーム間で受容体のシグナル伝達回路に及ぼす影響に差が生じる可能性について示唆している。これまで得た実験結果について十分な再現性を得ること、次世代シーケンシングによるEMT関連遺伝子の網羅的解析、TGF-β経路の阻害実験を行う。 最終年度では研究成果についてまとめ、学術論文あるいは学会発表にて報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により当初の予定より進捗状況に遅れが生じ、消耗品をはじめとする費用にに次年度使用額が生じている。また学会のオンライン開催などによる出張旅費の未使用金も次年度使用額に加算されている。翌年度請求助成金は遅れている再現性を得るための追加実験の実地、また研究計画に予定しているTGFBRのシグナル伝達系の解析、および本研究を報告するための論文作成費に充てる。
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