研究課題/領域番号 |
20K18798
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
豊田 有希 北海道大学, 大学病院, 特任助教 (00825507)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 口腔細菌叢 / 腸内細菌叢 / 自閉スペクトラム症 |
研究実績の概要 |
近年、腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)が脳に影響を与えることが明らかになり、自閉スペクトラム症(ASD)との関連が指摘されている。日々、唾液を飲み込むことで持続的に嚥下される口腔細菌は、直接的に、あるいは腸内細菌への影響を介して間接的に、ASDに関与している可能性がある。しかし、その関連については明らかにされていない。 本研究はASD患者の唾液と糞便から口腔と腸内の細菌叢を解析し、その組成バランスに特異性があるかを明らかにすることを目的とする。本研究の結果から、ASDに特異的な口腔と腸内の細菌叢のバランスが明らかになれば、ASDの病因解明に貢献できるだけでなく、唾液や糞便の検査という低侵襲な方法がASDの早期診断やバイオマーカーとして活用できるかも知れない。 2021年度は2020年度に引き続き、患者から検体と情報を収集しデータの集積を行った。対象は北海道大学病院小児・障害者歯科外来に通院する、ASD患者と定型発達の患者とし、検体として唾液と糞便、情報として診療情報と質問票記載情報を収集した。唾液と糞便から口腔と腸内の細菌叢をメタ16s解析し細菌組成のデータを蓄積した。診療情報から口腔内所見(歯列、口腔清掃状態、硬組織所見、軟組織所見)、質問票から身長と体重、既往歴(消化器症状、喘息、アレルギーなど)、出生と栄養(分娩様式、母乳・人工乳、卒乳時期など)、食事(極端な偏食、習慣的な飲食物)、生活習慣(歯磨きの回数、歯磨剤や含嗽剤の使用、習癖)のデータを蓄積した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、一定数のASD患者と定型発達の患者から検体として唾液と糞便を採取し、口腔と腸内の細菌叢のメタ16s解析データを集積している。解析には、Qiime2(16SrRNA解析用パイプライン)を使用し、現時点までに得られている口腔と腸内の細菌叢について、ASD患者と定型発達の患者の群間比較を行った。 ①分類学的構成および菌種組成の比較:ASD患者の口腔と腸内の細菌叢は、定型発達の患者の組成とは異なっていることが認められた。 ②菌種組成の類似性の比較(β多様性):ASD患者の口腔と腸内の細菌叢は、定型発達の患者の細菌叢とは類似していないことが認められた。定性的な評価、定量的な評価においても有意差が認められた(統計:Pairwise permanova)。 ③菌種の多様性の比較(α多様性):多様性の指標として、系統的な違い、種の豊富さ、観察された単位数について検討した。口腔と腸内の細菌叢では異なる傾向を示していた。そのため、詳細な解析を追加し検討を行う。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られたデータに対する追加の解析として、全ての細菌種を2群間で比較検討し2群間を区別できる細菌種・属の特定や菌の共存関係(どの菌とどの菌がよく検出されるか)について検討を行う準備は既に整えている。 同時に、新たな検体と情報も引き続き収集し、データの集積を行う。本研究の対象は、北海道大学病院小児・障害者歯科外来に通院するASD患者と定型発達の患者である。通常の診療で受診した際に、本研究のために追加で唾液と糞便を検体として採取することを依頼している。今後も、全国および北海道のCOVID-19感染状況を注視し、国の基本的対処方針および北海道の方針、それを受けた当院と本学の行動指針に則り、患者及び保護者の理解度や協力度を考慮しつつ研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響で学会等の開催様式がオンラインに変更となり旅費がかからなかったため次年度使用額が生じた。翌年分として請求した助成金と合わせ、2022年度の消耗品購入や検体解析に関する費用に計上する。データ解析に使用する。
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