研究実績の概要 |
う蝕および歯周病は有病率が非常に高く、歯の喪失によるQOL低下の主たる原因であるため、口腔内ケアによるその改善が強く求められている。一方、家族内に集積するう蝕や歯周病が存在し、通常の口腔内ケアでは改善できない重篤な症状を呈することも分かっている。近年、口腔内細菌叢がう蝕および歯周病発症に関与する可能性が注目を浴びていることから、家族内で集積しているう蝕や歯周病では、家族内で共有している口腔内細菌叢がその病態に影響している可能性を考えた。そこで本研究では、東北大学東北メディカル・メガバンク機構のコホート事業の一環として収集してある三世代家族(祖父母、父母、子)の口腔内検体でメタゲノム解析を行い、口腔内所見との関連を検討する。この解析により家族内で水平または垂直に伝播する口腔内疾患に関連する細菌を同定する。さらには、同定した細菌の分子生物学的解析を行い、口腔内疾患に関わる分子機構を解析する。本研究により、口腔内疾患の早期予測が可能となり、口腔内細菌を標的とした口腔内疾患予防法の開発につながることが期待できる。今年度は、父方・母方祖父母、父母、子の7人組の家族を20組と祖父母のいずれかと父母子の家族を合計180検体の歯垢のショットガンシークエンスを行い、ヒトゲノムを除去後の細菌由来のゲノムそれぞれ1,000万リード以上のデータ量を得た。今後このデータを用いて論文作成と学会発表を行う予定である。
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