研究課題/領域番号 |
20K18800
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小坂 萌 東北大学, 歯学研究科, 助教 (90706871)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 歯科的個人識別 / 歯科法医学 / 歯冠色歯科材料 / 色彩・蛍光波長 |
研究実績の概要 |
乾燥、湿潤、高温、低温といった様々な環境に置かれた遺体の口腔内環境は生前と大きく異なると考えられ、歯科所見採取に苦慮する場合が見受けられる。さらに近年の歯科材料および歯科治療技術の向上により歯冠色材料と天然歯との鑑別は益々困難となっており、歯科所見採取の際に注意が必要である。本研究では法医学的資料を想定し、特殊環境下に曝露された歯冠色材料の色調および蛍光変化について分光測色計、分光計を用いて客観的に評価し、歯科的個人識別に有用な指標を提示することを目的としている。 本年度は熱変性環境下における歯冠色材料の蛍光変化について検討した。国内に多く流通する歯科用コンポジットレジン4種およびグラスアイオノマーセメント2種を用いて200℃および300℃に設定した電気炉にて10分、20分、30分加熱した。400℃では毎分目視にて色調変化を確認し、黒褐色を呈した時点でサンプルを取り出した。各サンプルは室温に戻した後分光計にて蛍光波長を測定し、蛍光の強さを比較した。その結果、材料、シェード、性状(フロータイプ、ペーストタイプ)による蛍光の差が認められ、各材料における加熱による蛍光変化の特徴が明らかとなった。また400℃においては歯科用コンポジットレジンは2分程度で黒褐色を呈し蛍光測定不能となり、グラスアイオノマーセメントでは黒変しないものの弱い蛍光を示す程度であり、蛍光については測定可能な加熱条件の上限を示唆する結果となった。 今回の実験にて歯冠色材料の蛍光変化の特徴を示すことができたが、各材料の組成やサンプルの厚みによる影響、分光測色計を用いた色調変化についても今後検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の当初の目標としては室温、電気炉、水中、土中に留置した各歯冠色材料サンプルにおける色調および蛍光変化の予備実験を行う予定であったが、コロナ禍による各種事務手続きの遅延等により分光測色計CM-23d(コニカミノルタ社)の導入が遅れたため色調変化についての検討がやや遅れている。また外出自粛に伴い水および土のサンプル収集が困難であった点も遅れている要因の1つである。しかし歯冠色材料の入手を含め必要な機器・器具は揃っており実験の目途は立っているため、この遅れは解消できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の実験結果を踏まえ、まず熱による歯冠色材料の蛍光変化および色調変化について改善点を考慮した上で本実験に取り掛かる。具体的にはサンプルの厚みや加熱条件の見直し、計測者間誤差および計測者内誤差について検討を行い、測定方法の確立を目指す。測定方法の確立により、今後行う予定である熱環境以外の条件下における実験はよりスムーズに進むと予想される。 なお研究者の産前産後休暇および育児休暇に伴う研究の一次中断が生じるが、リモートワークを積極的に取り入れることで大きな遅れは生じないと考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
予備実験を行った上で検討した結果、当初予定していた分光測色計と異なる型の製品を購入したこと、歯冠色材料の劣化を回避するため少量ずつの購入としたことで費用が抑えられ、今回の差額が生じた。
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