研究課題
身元不明遺体における個人識別や自然人類学における古人骨の鑑定では、性別判定は重要な鑑定事項である。特に、DNA解析による性別判定は、形態人類学的特徴を利用できない試料にも適用でき、有用性が高い。法医DNA型鑑定で取り扱う試料は環境要因や微生物の影響をうけ容易に分解されるため、高度に変性した微量な試料から正確に判定を行うことが求められている。従来の報告では、主にアメロゲニン遺伝子のIntron領域の男女差を用いた判定が行われている。しかし、この領域は多型性が非常に高く、判定領域の遺伝子変異によって正確な判定が行えない事例が存在する。DNA鑑定による性別判定を確実なものとするためには、男女差以外の多型が可能な限り少ない座位を用いる必要がある。そこで、ヒトアメロゲニン遺伝子のExon領域の全長配列について、BLAST:Basic Local Alignment Search Toolを用いた塩基配列の相同性検索を行った。その結果、遺伝的保存性の高いExon 1領域に着目して、性別判定用プライマーセットを開発した。現在広く法医DNA型鑑定に用いられているGlobalFiler PCR Amplification Kit (GF)との比較を行い、正確な性別判定を安定しておこなうために必要なDNA量を検討する。そして、高度に断片化した古人骨試料を用いて本法とGFを用いて、比較実験を行い本法の有用性を検討する。本法はPCR産物の鎖長が短く、高度断片化試料についても適用可能、かつ手技が簡便で迅速、安価であり、法医学及び自然人類学に貢献できると考える。
2: おおむね順調に進展している
本研究にて設計したプライマーセットと、法医DNA型鑑定に用いられているGlobalFiler PCR Amplification Kit (GF)との比較検討を行った結果、正確な性別判定を安定しておこなうために必要なDNA量は、本法およびGFで共に25 pgであり、感度の面では同等であることが分かった。そこで、高度に断片化した古人骨試料を用いて両者を比較したところ、増幅産物の鎖長が短い本法はGFに比べてかなりの優位性が認められた。よって、おおむね順調に進展している。
これまでの実験データの収集および解析を行い、実験の統括をする。
産前産後、育児休暇取得し、実験の中断が必要であったため。これまでの実験データの収集および解析を行い、実験の統括をする。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Legal Medicine
巻: 59 ページ: -
10.1016/j.legalmed.2022.102136