研究課題/領域番号 |
20K18807
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
小西 勝 広島大学, 病院(歯), 講師 (60537447)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 放射線治療 / 味覚障害 |
研究実績の概要 |
頭頸部癌に対する放射線治療による有害事象の一つである味覚障害の本態と回復過程に関連する機序を明らかにすることを目的として研究を行っている。本研究では、舌癌に対して組織内照射を受ける患者を研究対象者としている。今年度は、昨年度までに研究登録した患者のデータ収集の継続とともに新たに組織内照射による治療を受けた舌癌患者2名を追加登録した。 今年度の研究内容は、放射線治療患者の味覚データの収集継続の他にこれまで研究登録した患者10名の37回分の検査データの解析を行った。解析項目は、主観的評価としてvisual analogue scale(VAS)、客観的評価として甘味、うま味、苦味に関する味覚受容体の発現量を調査した。VASスコアは0から100までのスケールで評価した。今回の解析では、VASスコアが90以上で味覚の回復とみなした。味覚受容体の発現に関しては、舌を放射線治療側と非放射線治療側とに分けてそれぞれの側から細胞を採取した。VASスコアが90以上となるのに要した平均日数は、甘味で284日、うま味で308日、苦味で308日であった。味覚受容体発現に関しては、放射線治療直後は、甘味、うま味、苦味のすべての味覚受容体において、舌の放射線治療側で発現量が多かったが、その後、経時的に舌の放射線治療側と非放射線治療側の味覚受容体発現量の差は少なくなる傾向を示した。しかしながら、味覚受容体の発現量には大きなばらつきがあり、味覚受容体の発現量とVASスコアとの関連性についての示唆を得るには至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
舌癌で組織内照射による放射線治療を受ける患者数が、COVID-19の影響もあり、当初計画したよりも下回っているため、データの収集がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、新規の登録患者数を増やしながらさらなるデータ集積を行う予定にしている。また、今年度のデータ解析では、放射線治療後の甘味、うま味、苦味について行ったが、次年度は塩味と酸味についてもこれまで得られたデータの解析を行って新たな知見を得たいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響で当初の予定通りに研究が進んでおらず、それに伴い研究費の使用額も予定より少なかったため次年度使用額が生じた。今年度は研究に必要な装置の購入や学会発表、論文作成に関する費用として使用する予定である。
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