2019年7月から2020年12月に歯科治療のため京都府立医科大学附属病院歯科外来を受診し、H. pylori除菌歴のない患者221名を対象とした。対象者には全員、書面によるインフォームドコンセントを行った。自記式質問票を記入しなかった被験者(男性6名)、尿サンプルを提出しなかった被験者(男性1名、女性4名)は解析対象から除外した。その結果210名(男性117名、女性93名)を最終的な解析対象者とした。家族歴、病歴、生活習慣に関する情報を質問票により収集した。さらに齲蝕の状態(DMF歯数)、歯周病の状態(CPIスコア)を測定した。H. pylori感染の検出には尿中抗体検査を用いた。その結果、H. pylori感染の有病率は14%であった。さらにH. pylori感染者は非感染者に比べて齲蝕の者の割合が多かった(p<0.05)。また年齢、性別、胃がんの家族歴の有無、心臓病既往の有無、ストレス自覚の有無、CPIスコア、未処置歯の有無、欠損歯の有無を調整したロジスティック解析の結果、H. pylori感染の有無は未処置歯の有無と正の相関を示した(OR: 3.717、95%CI: 2.292 to 6.026)。さらに、H. pylori感染の有病率は、虫歯の本数に応じて増加した(p< 0.05)。以上よりH. pylori感染している者は、齲蝕を保有しやすいことがわかった。齲蝕治療はH. pylori感染予防につながる可能性がある。
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