研究課題/領域番号 |
20K18813
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
田中 公美 (五十嵐公美) 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (40847612)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 在宅歯科医療 / 要介護高齢者 / 生活機能 / 口腔機能 / 摂食嚥下機能 / 予後 |
研究実績の概要 |
本研究は、医科訪問診療が開始された高齢者に対して包括的な口腔機能評価と必要な歯科医療介入を行うことで、生活環境と口腔機能との関連、歯科医療介入の影響、予後との関連を把握することを目的としている。本研究課題は令和2年度から5年度までの4か年計画であり、今年度はその2年目であった。すでにパイロット調査で得られていた対象者および新規対象者計は累計89名となった。今年度は横断研究と共に、前向き研究の解析を行った。6か月時点での歯科訪問診療継続可否、ならびに継続可否に関する予測因子の検討結果について示す。 欠損データ等を整理し、67名(男性33名、女性34名、年齢中央値86.0歳(67-97歳)を解析した。Barthel Indexの中央値は50点(0-100点)であった。対象者の54名(80.6%)は同居家族あり、12名(17.9%)は独居であった。半年後の受療継続可能者は35名(52.2%)、不可能者は32名(47.8%)であった。継続不可能となった理由は、死亡19名(59.4%)、施設入所5名(18.5%)、入院3名(9.4%)であった。受療継続可否と各項目の関連性を検討したところ、世帯構成との間に有意な関連は認めなかった。継続不可能者では、継続可能者に比してBMIが19未満の者が有意に多かった。同時にOHATの「舌」項目において、1点以上である「変化および病的」を示す者が有意に多く、これらは年齢、CCIを調整した解析においてもいずれも有意であった。 以上より、医科訪問診療が開始された在宅療養高齢者において、歯科訪問診療の継続は困難な者が多く、低栄養の存在および舌の清掃性低下、舌の病的変化、舌運動機能の低下が受療継続可否の予測因子となりうる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、パイロット調査から月当たり5-6名の対象者がリクルートされる予定であった。しかし、新型コロナウイルスの影響により訪問による歯科医療介入を拒否されるケースや、介入開始となっても中断となるケースが生じたため、新規対象者は予定人数に届かなかった。 現状、月1-3名で対象者はリクルートできており、再評価患者も解析可能なサンプルサイズを維持できている。協力者の医師やその他医療職、介護職と連携を図り、不可避の脱落が最小限に抑えられるよう調整を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も引き続き新規対象者のデータ採取と、現在開始している対象者の半年ごとの再評価を予定する。追跡調査にあたっては、拒否、主治医変更等により予後不明となりやすいため、医療介護職との連携を図り調査し、具体的な歯科医療介入の影響や予後との関連を把握する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた人数のデータ採取が行えなかったため使用予定額に達しなかった。しかしながら着実に対象者はリクルートできているため、来年度もデータ採取に使用する物品費、経費として使用する。また横断研究、前向き研究、双方の結果が明らかになってきたため、成果発表に向けての書籍の購入、論文投稿費などでの使用も計画している。
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