研究課題/領域番号 |
20K18826
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤井 菜美 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (90635377)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 咳嗽音 / 湿性咳嗽 / 乾性咳嗽 / 誤嚥性肺炎リスク |
研究実績の概要 |
【目的】誤嚥量が多いと誤嚥物の排除のために分泌や痰が増加するため,湿性咳嗽を呈する場合がある。湿性咳嗽は,下気道の過分泌を反映すると言われている。これまで,乳幼児において,湿性咳嗽を呈していると肺炎リスクが高かったことが報告されている。嚥下臨床の場において,誤嚥性肺炎の発症の回避は重要であり,高齢者においても咳嗽音の質の判定がその一助となる可能性がある。しかしながら,湿性咳嗽の判定は診察時の医療従事者の専門性や経験の多寡に左右され,客観的に分類する技術が求められている。本研究では,咳嗽音に音声特徴抽出方法を行い,呼吸器内科医による湿性・乾性咳嗽の分類を,機械学習させた。上記により,精度の高い湿性・乾性咳嗽の自動分類のシステムを作製することが可能であった。 【方法】 <対象>74名の高齢者 男女比26:48 年齢84.9±8.3歳 <録音方法>録音は静かな部屋にて実施した。誘発咳嗽を携帯型レコーダー(APH-1n 96kHz 24bit)にて,患者の口元から50㎝程度の距離で録音した。咳嗽音を1つずつに区切り,各被験者あたり1-10個の咳嗽音をピックアップした。合計336咳嗽音を,20年以上の経験のある呼吸器内科医師の聴覚判定によって,乾性咳嗽274,湿性咳嗽58に分類した。 <解析方法>各咳嗽音のデータと聴覚判定結果(湿性・乾性)をデータセットとして用い,機械学習として畳み込みニューラルネットワークを用いた深層学習を行った。 【結果と考察】機械学習により構築された識別器を用い,学習に用いなかった検証用データ(乾性咳嗽30,湿性咳嗽30)を対象に識別を行った結果,96.7%の精度で分類が可能であった。今後は嚥下診察時に咳嗽音の判定を行い、肺炎の発症との関連を調査していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
covid19の感染状況により、誘発咳嗽音を録音することは、感染リスクが高いこととして認知されたため、高齢者施設では研究の許可が得らえなかった。そのため、covid19の感染が収まっている期間を見ながらの研究となり、研究が何度もストップしてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
5月にcovid19が五類感染症となり、施設での研究が行いやすくなる可能性がある。感染対策に留意しながら、少しでも咳嗽音の数を増やしていけるように尽力する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
covid19の感染状況により、研究計画に遅れが出てしまったため。継続して、施設・病院にて咳嗽音のデータ収集を行う。また、本年度までの研究結果をもとに、学会発表や論文執筆を行う予定にしている。
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