糖尿病は多くの合併症を有する生活習慣病である。糖尿病の治療としてまず食事療法と 運動療法が行われる。改善しない場合にはじめて薬物療法を開始することから食事療法は非常に重要である。一方で、食事療法における咀嚼は重要であると考えられるが、現在のところ、客観的咀嚼能力の基準は定着していない。その点に着目し本年度は、臨床研究を実施し当院歯科に紹介された糖尿病患者を対象に、通常の歯科治療の実施に加えて、あらかじめ倫理審査委員会で承認の得られた説明文書を使用して研究について説明し、インフォームド・コンセントを得た研究対象者に対し、咀嚼能力検査を行った。咀嚼能力検査はGCのグルコセンサーとグミゼリーを用いた方法で行った。そして研究対象者の各種検査項目のデータと咀嚼能力検査結果について、広く探索的に検討を行った。そこでまず収集した咀嚼能力と研究対象者の各種検査項目のそれぞれ単独での相関、および平均値の比較を行ったところ、数項目について有意差を認めた。 また咀嚼能力について重回帰分析を行い、上記で検討した項目をもとに単独ではなく複数の各種検査項目を含めた状態で、研究対象者の咀嚼能力へ影響していると思われる項目について検討を行ったところ、数項目について有意差を認めた。 本結果をもとに、今後咀嚼能力に影響を及ぼしている検査値についてさらに詳細な研究を進めていくことで、咀嚼能力との関係が明らかになれば糖尿病患者に対する歯科的なアプローチ構築の一助となる可能性がある。 詳細な解析の内容については、今後論文等にて発表を予定している。
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