本研究は,フレイルや要介護と関連する可能性があるとされる高齢者の口腔機能の低下に対して,歯科医院で効率的かつ効果的に対応できるようにするために,歯科来院患者の特性によって口腔機能低下を示す各検査項目の状況を調査して特徴を把握し,口腔機能管理を実施する上で患者の状態や状況にあわせた効率的管理を行うための情報を集めることを目的としている。その目的のために,本研究では,大学病院補綴科における多数歯欠損を有する義歯患者と歯周病専門医のいる歯科診療所の歯周病安定期治療中にある患者について検討してきている。さらに,口腔機能低下を示す各検査指標がどのようであれば身体的フレイルと関連がより強くなるのかについてもデータ分析を行いつつある。 これまで上記の2施設で口腔機能検査を行ってきた結果,多数歯欠損の義歯患者の方が歯周病管理中の患者よりも口腔機能低下症の罹患率が有意に高く,口腔機能の各測定項目においても多数歯欠損の義歯患者が低下を示す割会が多いことがわかってきた。口腔機能の計測以外に大学病院補綴科では,体組成,握力,歩行速度などのサルコペニアの検査をできているが,歯周病安定期治療を主とする歯科診療所では歩行速度が物理的に実施できない環境となりサルコペニア,フレイルの評価ができていない状況がある。しかし,大学病院補綴科において,口腔機能低下とサルコペニア,フレイルの関連分析は進めてきており,サルコペニアもフレイルも舌圧との関連が有意にあることがわかってきている。現在,大学病院補綴科研究協力者を歯の欠損の多い義歯患者と残存歯数が多い患者に分けることによって,残存歯数の大小によって患者特徴を分類し,サルコペニアとフレイルの関係を比較しているところである。
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