【研究の概要】 抜歯などの侵襲的歯科治療はMRONJ発症リスク因子と考えられてきたため、これまで骨吸収抑制薬投与患者では抜歯は避けられてきた。本研究では抜歯後MRONJの発症リスク因子を明らかにするために計画された。まず過去の症例の後ろ向き研究より、骨吸収抑制薬投与患者の歯の所見を約8000本調査し、MRONJ発症に関連する因子を検索したところ、根尖病巣、深い歯周ポケット、歯根膜腔拡大、根周囲の硬化像、局所感染所見など歯性感染症を示唆する所見とMRONJ発症率との関連を認めた。次に抜歯について検討するために、抜歯例と非抜歯例の歯科的背景因子を傾向スコアマッチング法により調整すると、抜歯を行った症例のほうがその後のMRONJ発症率が有意に高くなっていた。これらのことから、骨吸収抑制薬が投与されていても、感染源になる歯は積極的に抜歯をしたほうがMRONJ発症予防につながることが示唆された。 【現在までの進捗状況】 抜歯後MRONJ発症の原因は骨に対する外科的侵襲か、抜歯する歯の周囲の存在した局所感染か、という点について検討を進めている。過去の症例の8000本余りの歯の検討から、MRONJ発症は局所感染が存在していた症例に多かったことと、背景因子を調整して検討すると抜歯はMRONJ発症リスクではなく、逆にMRONJの発症を抑制していることが初めて明らかとなった。
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