口腔機能低下症の患者に対する口腔機能管理の効果にはいまだ不明な点が多い。そこで今回,口腔機能低下症と診断された外来患者に対して実施される口腔機能管理前後の口腔機能や栄養状態の変化を1.5か月および3か月後の調査し,その効果を検証することを目的とした。 口腔機能精密検査,身長,体重,Body Mass Index (BMI),食品摂取多様性スコア,握力,年齢,性別,Mini Nutritional Assessment (MNA),Council on Nutrition Appetite Questionnaire (CNAQ)の計測を行った。被験者ごとに,低下が認められた項目に対する訓練を毎日行うよう指導した。期間は1.5か月および3か月間とした。被験者には,訓練を実施した日を配布したカレンダーに記録させた。加えて,食事バランスガイドを用いた栄養指導を全員に対して行った。管理開始前と1.5か月後および3か月後について,全参加者の各計測項目をWilcoxonの符号付順位検定で比較した。 1.5か月後の口腔機能低下症患者で舌圧が低下していた者に対して機能訓練を行うことで,舌圧の向上が認められた。さらには,口腔機能管理を行うことで,栄養状態の改善が示された。3か月の口腔機能管理により口腔機能の向上および該当項目数の減少が認められ,口腔機能管理の効果が明らかとなった.今回は,口腔機能管理群だけでなく口腔衛生管理群においても口腔機能の改善が認められた.栄養の指標については両群ともに有意差は認められなかったが,3か月では評価期間が短かった可能性があり,栄養指導の効果を明らかにするには研究期間の延長を検討する必要があると考えられた. 本研究の結果より,口腔機能低下症と診断された65歳以上の外来患者において,3か月間の口腔機能管理により口腔機能精密検査の低下項目数で改善が認められた.
|