研究課題
今年度は短鎖脂肪酸レセプターであるGPR41、GPR43、GPR109AおよびOlfr78のマウス顎下腺の免疫染色を行った。複数の抗体を使用し抗原賦活化方法等も工夫したが、免疫染色ではこれらのレセプターをうまく染色することができなかった。研究期間中に行った実験で判明したことについて記載する。GPR43KOマウスとC57/BL6マウスに無繊維飼料を与え、唾液中IgA分泌速度と顎下腺pIgR発現量の測定を行ったところ、両群に差は認められなかった。しかし、盲腸内で短鎖脂肪酸を産生するフラクトオリゴ糖を添加した飼料を与えたところ、C57/BL6マウスの唾液中IgA分泌速度は増加した。唾液中IgA分泌速度と唾液腺pIgR発現量増加には、盲腸で産生されたSCFAが関与していることが明らかになった。ラットに短鎖脂肪酸のうち、酢酸・プロピオン酸・酪酸を添加した水を飲ませ、唾液中IgA分泌速度と、ドーパミンの前駆体で交感神経活性化の指標となる物質である「チロシンヒドロキシラーゼ(TH)」の濃度が顎下腺内で増加するかどうかを検討した。その結果、短鎖脂肪酸を添加した水を飲んだラットでは血中の短鎖脂肪酸濃度が増加し、唾液中IgA分泌速度と顎下腺TH濃度も増加していた。さらに、唾液中IgA分泌速度と顎下腺TH濃度には正の相関が認められた。唾液中IgA分泌速度の増加には、血中で増加した短鎖脂肪酸により交感神経活性化が関与している可能性が明らかになった。短鎖脂肪酸を添加した水を飲むことによる顎下腺のTH濃度の増加は、「継続的な交感神経刺激」に当たるため、継続的な交感神経刺激が唾液中IgA分泌速度を増加させる可能性も明らかとなった。
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Applied Sciences
巻: 13 ページ: 3893~3893
10.3390/app13063893