昨年度内に、購入したJMDCデータを用いた解析を行い、全2680名の医療的ケア児における在宅ケア(訪問診療または訪問看護)の導入割合についてのデータを得た。結果を整理し、英語論文を作成、投稿作業中である。 この論文作成の過程で、在宅ケア(訪問診療または訪問看護)を導入されているが、医療ケアデバイス(人工呼吸器、酸素、経管栄養、腹膜透析など)を有さない群が非常に多いことに気が付いた。小児に対する在宅医療の展開はこれまで、医療デバイスを使用している、重度の医療的ケア児が中心であると考えられていたが、より軽症の医療的ケア児、あるいは非医療的ケア児に多くの資源が割かれている可能性が浮上した。厳密に医療的ケア児を医療レセプトから把握することは困難であるため、ICD-10病名を用いて、いわゆる「基礎疾患を有する児」かどうかを分析し、在宅医療の導入との関連を調査した。 結果、今回入手したJMDCデータの中では、在宅医療(訪問診療または訪問看護)を受ける小児全9557名中、5079名(53.1%)が、基礎疾患なしであることが判明した。 当初の研究計画には無かったが、医療的ケア児の在宅医療を考える上で、小児在宅医療の全体像を把握することは必須である。基礎疾患の無い、いわゆる健常児が在宅医療リソースの過半数を占めるというのはこれまでにない知見であり、今後は小児在宅医療を語る上で、健常児に対する在宅医療の有様についても合わせて考え行く必要性が示された。 当初はNDBを用いた解析を予定したいたが、JMDCデータの解析に時間を要したことと、上記の通り予想に反して健常児の訪問診療数が多く、さらに大規模な解析に進む前に健常児に対する訪問診療の状況もより詳細に分析した方が良いと考えられたことから、実施しなかった。この課題については引き続き、2023年度から厚労科研の中で取り組む予定である。
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