研究課題/領域番号 |
20K18843
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松下 明弘 東京大学, 医学部附属病院, 診療放射線技師 (70867259)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 医療安全 / インシデント / インシデントレポート / 医療事故 / mixed reality / 手ぶれ |
研究実績の概要 |
プロジェクトの1年目にあたる2020年度は当初の研究計画の通り,酔いにくいMixed Reality (MR)の開発に着手した.サイバー酔いに関する文献を調査したところ,視覚情報と身体の運動や姿勢の情報の矛盾がサイバー酔いを引き起こす原因であることが挙げられた.撮影した映像の手ぶれによって視覚情報と身体の運動や姿勢の情報が矛盾すると考えられたため,先行研究ではカメラを手に持って撮影していたが,新たにカメラ用のスタビライザを用いて撮影することにした.また,研究参加者の頭部の回転もサイバー酔いを引き起こす原因になると考え,頭部の回転を抑制するために,360°全天球カメラから180°ステレオカメラに撮影機器を変更した.新たな撮影装置で映像の撮影を行ったところ,スタビライザの使用によって手ぶれを防止することに成功した.2020年度は,新たな撮影装置で撮影した映像のサイバー酔いに関する評価は実施しなかった.
先行研究で行ったインシデントレポートに関する記憶のテストの詳細な解析で,MRを用いたレポートを体験した群と従来の文字のみのレポートを読んだ群の両群において,点数が低くなった問いが明らかになった.この問いは両群のどちらに対しても文字で提供した情報に関する問いであった.この原因が研究参加者の視線にあるのではないかと仮説を立て,本プロジェクトの新たな調査対象に研究参加者の視線の検出を含めることにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では新たな撮影装置で撮影した映像を用いて,研究参加者を募ってサイバー酔いの評価を行う予定であったが,2020年度は新型コロナウイルスの影響で研究の活動制限があり,また医療機関で行う研究であることから,2020年度の研究参加者の募集を見送った.このため,サイバー酔いへの対策の効果を調査することができていない.2021年度は感染拡大防止対策をとりながら,サイバー酔いへの対策の効果を調査する.
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今後の研究の推進方策 |
プロジェクトの2年目にあたる2021年度は,2020年度に未達に終わったサイバー酔いへの対策の効果を調査するために,研究参加者を募集して実施する.研究の実施時には,感染拡大防止対策を行う.
新たな調査対象に研究参加者の視線の検出を含めるため,視線検出が可能な没入型Head Mounted Displayの購入を計画している.それに伴い,視線検出に関する文献の調査を行っていく.
先行研究と内容の異なるインシデントレポートの再現を新たな撮影装置で撮影し,酔わないMRを用いたインシデントレポートの開発を行う.2021年度中に,新たに開発したMRを用いたレポートと従来の文字のみのレポートの比較を行うために研究参加者の募集を行い,研究実施を開始したい.2022年度もこの研究実施を継続して行っていきたい.研究対象者が診療放射線技師以外の病院職員を対象にしているため,参加者の募集のために説明会を行う予定であったが,新型コロナウイルスの影響を考慮し,研究紹介の短い映像を用意して研究参加の希望者を募る予定である.加えて,研究参加の希望者に対して個別で詳細な研究説明を行っていきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で,国内外の学会や関連の勉強会がオンライン開催または,中止となったため,旅費の支出がなかった.次年度に現地での学会参加が可能であれば,旅費を支出する.さらに,2020年度のサイバー酔いへの対策の効果を調査する研究の実施で支出予定だった謝金は,研究実施を見送ったために支出がなかった.謝金は次年度の研究実施時に支出する予定である. 物品費に関して,視線検出機能を搭載した没入型Head Mounted Displayを購入することになり,通常の機器よりも高額になるため,次年度予算と合わせて購入することを計画している.
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