本研究では感染症医が常駐していないICUで抗菌薬適正使用支援プログラム(ASP)を導入した効果を明らかにすることが目的である。ASPの手法として薬剤師を含む多職種での回診を2016年10月から実施し、抗菌薬が適正に使用されているかを振り返るTime outを2018年6月から導入した。Time outは多職種回診時に行い、主治医に培養結果の確認を促し、臨床経過を踏まえて集中治療医や薬剤師、主治医がそれぞれの症例の抗菌薬使用を議論する場を設けることを目的とした。実施タイミングは抗菌薬開始3日後、7日後、14日後とし、抗菌薬を使用する目的の感染巣、予定治療期間、効果の有無の3点を確認した。Time out導入前後で患者転帰が改善するか多変量解析を用いて比較検討した結果、ICUに入院した16歳以上の患者において、生存退院のsubdistribution hazard ratioが1.13 [95%信頼区間:1.02-1.25]となり、生存退院した患者の在院日数が短縮したことが示唆された。静注抗菌薬の抗菌薬使用日数はTime outを導入した直後に有意に減少し、その後も経時的に減少した。 さらに、ICU入室後24時間以内に抗菌薬が投与された患者について、入室3日後までのde-escalationの有無と患者の転帰、耐性菌新規発生率について検討した。逆確率重み付け法を用いた傾向スコア解析の結果、退院時死亡についてオッズ比1.12 [95%信頼区間:0.07-18.5]、耐性菌新規発生は1.55 [95%信頼区間:0.23-10.5]であり、差は認められなかった。
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