本研究の目的は、高齢がん患者においても全生存期間をエンドポイントに設定している試験が多いなか、「いつまで元気でいられるか」というエンドポイントの定義および評価方法の提言を作成することである。 高齢者を対象とした過去の臨床試験(主に第III相試験)で用いられたプライマリ・エンドポイントの定義および評価方法をPubMedおよびCINAHLを用いてスコーピオンレビューを行い、その最終解析結果をESMO2023で発表した。結果として、高齢がん患者を対象とした臨床試験のうち、約80%は全生存期間などの生存期間をプライマリーエンドポイントにしていた。一方、残りの約20%の臨床試験では、QOLが約7%、高齢者機能評価が約4%、有害事象が約8%(重複あり)であった。それぞれ、どういったツールを用いて、評価時期、臨床的に意味のある差、欠測の扱いなどを評価して公表した。この研究結果により、今後、高齢がん患者の臨床試験を行う際に、適切なプライマリーエンドポイントを設定する一助になると考える。 なお、学会発表時に参加者から、スコーピオンレビューにはEmbaseを入れるべきとの意見がありこれを追加した。研究立案当初、Embaseの使用料金は非常に高額なため使用しない方針であったが、最低限の使用に留めることで、Embaseの使用を可能とした。Embaseのデータを追加した結果がまとまり次第、海外雑誌に論文を投稿する。 また、スコーピオンレビューの結果から、高齢がん患者のプライマリ・エンドポイントには認知機能障害を含める必要があるものの、認知機能障害の評価は人的・時間的な負担になるため日常診療や臨床試験で行われることは少ないことが分かった。このため、認知機能障害のスクリーニングツールであるMini-cogアプリを開発した。これにより、認知機能の評価がたやすくなった。
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