研究課題/領域番号 |
20K18862
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
高橋 千果 東海大学, 医学部, 講師 (00459455)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | がんゲノム医療 / がん遺伝子パネル検査 / アンケート調査 / がん治療認定医 |
研究実績の概要 |
がん診療において日常的にゲノム解析をする時代が到来した。本研究の目的は、がん患者とがん診療医のがんゲノム医療に関する認識を把握し、情報の均てん化に資する方略を探ることにある。がん患者とがん診療医に対して横断的にアンケート調査を行い、がんゲノム医療の情報格差について検討する。がんゲノム医療を希望する患者ががんゲノム医療についてどのような認識を有しているのかを調査し、患者の認識と事実との乖離の有無を明らかにすることとした。さらに、がん診療医に対して横断的に質問紙調査を行い、がんゲノム医療の情報格差について検討する。これらの調査結果に基づき、がん患者とがん診療医を対象とした教育用資材を作成し、公表する予定である。 コロナ禍が続いており、がん患者へのコンタクトは控え、がん治療認定医へのWebアンケート調査を行った。病院倫理委員会で承認を得た後、日本がん治療認定医機構(JBCT)のホームページ上で公開されている、全国のがん治療認定医約17,000名のうち、認定研修施設に属する14,600名を対象とし、Webアンケート調査を施行した。PC/スマートフォンで回答しやすいようにアンケート画面のデザインをし、アンケート依頼書を対象者全員とその施設長に郵送した。この際、依頼書にQRコードをつけるなど回答しやすいように工夫をした。アンケート回答期間は1ヶ月弱とし、計2,402名からの有効回答を得た。現在データ解析中である。 がんゲノム医療中核拠点病院、がんゲノム医療拠点病院、そのほかの病院に勤務する各診療医において、がんゲノム医療に対する知識、認識にどのような相違があるのか、また、地域格差、診療科等背景による差異など、明確にしていく。 本研究成果は、地域の医療現場においてがんゲノム医療を適切に患者へ届ける体制の一助となり、わが国においてがんゲノム医療の均てん化を図ることを促進するものと確信する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に続きコロナ禍であったが、研究方法の再構築で速やかに対応できた。病院倫理委員会で承認を得た後、日本がん治療認定医機構(JBCT)のホームページ上で公開されている、全国のがん治療認定医約17,000名のうち、認定研修施設に属する14,600名を対象とし、Webアンケート調査を施行した。研究者の施設はがんゲノム拠点病院である。がんゲノム拠点病院として機能していく中で様々な問題が表出しており、それらの経験も踏まえ、我が国におけるがんゲノム医療実施における問題抽出を目的としたアンケート内容を決定した。PC/スマートフォンで回答しやすいようにアンケート画面のデザインをし、アンケート依頼書を対象者全員とその施設長に郵送した。この際、依頼書にQRコードをつけるなど回答しやすいように工夫をした。アンケート回答期間は依頼書到着後約2週間とし、計2,402名からの有効回答を得た。 現在データ解析中である。がんゲノム医療中核拠点病院、がんゲノム医療拠点病院、そのほかの病院に勤務する各診療医において、がんゲノム医療に対する知識、認識にどのような相違があるのかを明確にする。また地域格差、診療科等背景による差異など、明らかにしていく。
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今後の研究の推進方策 |
1. がん診療医のがんゲノム医療についての認識を明確化する:がん診療においてゲノム解析が当たり前となり、がんゲノムを専門としない医療者もゲノム解析や遺伝性腫瘍と無関係ではいられない時代となった。国民皆保険の我が国において、患者に届けられる情報に格差がないことが望ましく、情報提供の一番の担い手であるがん診療医のリテラシー向上が期待される。2021年度にがん治療認定医への全国Webアンケート調査を実施した。対象者は全国のがん治療認定医約14,600名であり、計2,402名から有効回答を得た。 2. 1.で得られたデータ解析を行い、がんゲノム医療中核拠点病院、がんゲノム医療拠点病院、そのほかの病院に勤務する各診療医において、がんゲノム医療に対する知識、認識にどのような相違があるのかを明確にする。また地域格差、診療科等背景による差異など、明らかにしていく。3.2.で抽出された問題点をベースに、質的評価を行う:がん治療認定医のフォーカスグループインタビュー (FGI)の実施;がんゲノム医療についての知識・認識・期待や懸念など質的に検討する。10診療科より各科3名を対象とし、医師のがんゲノム医療において直面している問題をインタビュー形式で質的に明らかにする。1人約40分を予定している。4.教育資材の開発:地域における患者と医療者のニーズを明確化した上で、がんゲノム医療及び遺伝医療連携モデルを提案する。具体的には、DVDなど情報提供媒体の作成、セミナーの開催、遺伝カウンセラーなどの専門家の医療機関への派遣を計画する。今回提案する医療連携モデルは、全国の地域医療連携にも応用できることが見込まれ、社会的な意義がきわめて高い。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はWeb大規模アンケート調査を施行した。より多くの回答が得られることが成果につながると考え、対象者に確実に依頼可能となるよう、依頼書は個別に郵送とした。アンケート輸送費、事務手数料、Webアンケート外注費、人件費等で予算を使用した。順調に研究が推移したため、当初予定していた使用額を上回る可能性が示唆されたため、次年度分の一部を前倒し、研究遂行とした。次年度使用計画は、データ解析費、成果発表、事務手数料等で使用予定である。
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