研究課題
初年度の研究実績は主に2つである。1つ目は誤嚥性肺炎、歯周病に関する臨床知見の系統的レビューを行い、経済評価の基盤の構築を進めたことである。要介護高齢者における歯周病治療による誤嚥性肺炎予防については、米山らの2002年の報告を契機に注目されるようになったが、平成29年度に宮崎県で行われた特別養護老人ホームならびに介護老人保健施設に対するアンケート調査によると、「口腔ケアが誤嚥性肺炎予防に重要であると知っているか」の問いにはすべての施設で「はい」という回答があったものの、定期的に歯科検診を実施している施設の割合は、特別養護老人ホームで51.2%、介護老人保健施設で57.5%であり、いまだ要介護高齢者に対する歯科医療サービスは浸透していないことが明らかとなった。これらの現状をもとに経済モデルの判断樹の作成を行った。2つ目の研究実績としては、本研究の基礎となる費用効果分析の手法を用いて、慢性腎臓病患者への生活食事指導による介入に関する医療経済分析を行い、国際学術誌に投稿したことである(Cost-effectiveness of behavior modification intervention for patients with chronic kidney disease in the FROM-J study Journal or Renal Nutrition DOI: https://doi.org/10.1053/j.jrn.2020.12.008)。食事栄養指導に関する診療報酬の改定や慢性腎臓病診療ガイドラインへの追加などの根拠となる経済エビデンスを提示することができたことは大変意義深い業績と考えられる。
2: おおむね順調に進展している
本研究の基礎となる文献レビュー、データ収集、専用の経済ソフト(Tree Age Pro)による判断樹とマルコフモデルの作成の技術を習得したため。
文献レビューから得た情報で不足する臨床情報や費用について、介護施設での実態調査や歯科往診実態調査、エキスパートオピニオンにて情報収集を行う。施設入所中の要介護高齢者を対象者とし、費用効果分析の基盤となるマルコフモデルを構築する。次に、収集した情報をマルコフモデルに投入し、100歳までの予後を解析ソフトTree Age Proを用いて増分費用効果比を算出し、介護施設における要介護高齢者を対象とした費用効果分析を行う。結果をまとめて論文化し、国内外の学会発表と国際学術誌への投稿を行う。
2020年度は新型コロナウイルス感染症流行の影響で、国内外の学会がオンライン開催となり予定していた旅費が必要なくなったことが、大きな理由である。次年度は可能な範囲で学会の現地参加やフィールドワークを予定しているため、旅費として使用することを計画している。
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Research in social & administrative pharmacy
巻: 17 ページ: 368-371
10.1016/j.sapharm.2020.03.014
Journal of Renal Nutrition
巻: - ページ: -
10.1053/j.jrn.2020.12.008