本課題は肥満、糖尿病、脂質異常症などの循環器疾患危険因子との関連が示唆されている炭水化物に注目し、その種類による影響の違いや遺伝的な味覚の影響の検討を目的とした。 はじめに検討対象コーホートで用いられている47項目食物摂取頻度調査票(FFQ)で推定する利用可能炭水化物とその成分(でん粉、ぶどう糖、果糖、ガラクトース、しょ糖、麦芽糖、および乳糖)について、新たに公表された日本食品標準成分表2020年版(八訂)と従来の七訂を比較した。また、日本多施設共同コーホート研究(J-MICC Study)大幸地区参加者において味覚、炭水化物やしょ糖摂取(それらを多く含む食品)との関連が報告されている遺伝子多型のタイピングを行った。最終年度は35-69歳の男性177名、女性182名を対象に利用可能炭水化物とその成分の摂取量を47項目FFQで推定するために回帰式を開発し、その妥当性を検討した。妥当性検証は5分割交差法を用いた。FFQの回帰式はDRの摂取量を従属変数、FFQの各食品からの摂取量を独立変数とした変数選択法による回帰分析で求め、FFQの摂取量を推定した。基準となる食事記録法(DR)の栄養素等摂取量は12日間の平均値を用いた。DRとFFQのエネルギー調整済みSpearman's順位相関係数を個人内変動で調整して評価した。得られた各栄養素の平均相関係数のレンジは男性で0.4~0.7、女性で0.3~0.6で、特にぶどう糖は低く、乳糖とガラクトースが高い傾向にあった。47項目FFQが推定する利用可能炭水化物の妥当性は男女ともに中程度であることが示唆された。
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