研究課題
昨年度実施した市販豚肉のE. albertii汚染実態調査では、複数の小売店で販売されていたレバーやホルモンなどの内臓肉からE. albertiiの遺伝子が検出され、その中のホルモンやタンから本菌が分離された。そのため、これら分離株について各種遺伝子型や病原因子の保有を解析した。その結果、分離株はいずれもEAOg5に型別され、過去に一部の集団食中毒事例から分離された株のEAOg型と同一であることが示された。また、E. albertiiの主要な病原因子であるeaeがいずれの分離株でも陽性であったため、これらの株のヒトへの病原性が示唆された。そのため、豚肉中に含まれるE. albertiiをはじめとする食中毒細菌の殺菌のために、豚肉は加熱調理することが重要であることが改めて示された。また、E. albertii株が分離された豚肉培養液のリアルタイムPCR法の結果を精査したところ、特定のCt値未満であれば分離陽性であることが示された。そのため、培養液からE. albertiiの分離を試みる際は、Ct値を一つの参考にし、求めるCt値未満でない場合には2段階増菌培養などを実施することで培養液中のE. albertii数をさらに増やし菌分離をより容易にする必要があると予想された。さらに、食品ごとに含まれる夾雑菌が異なるため、2段階増菌培養を実施する際には、複数種類の増菌培養液を用いることが有効であることが示唆された。E. albertiiに関してはO抗原遺伝子型にあたるEAOg型が多様であるため、広くE. albertii全てに対応した血清が開発されたならば、免疫磁気ビーズなどを用いた菌濃縮法によって分離培養法の一助になることが期待される。
3: やや遅れている
当初予定されていたR5年度の研究内容としては、分離株の全ゲノム配列決定と解析、病原性関連遺伝子等の型別と比較および培養細胞を用いた病原性の評価であったが、培養細胞を用いた解析が予定よりも遅れている。E. albertiiは運動性の発現に一定の条件が必要であり、運動性の有無で培養細胞での挙動が変化することが報告されているため、今後は本菌の運動性に着目し培養細胞での試験を実施したい。
引き続き、E. albertii食中毒が発生した際には対象自治体に協力を要請し、食中毒事例におけるヒト由来株を収集する。分離株について、各種生化学性状及び病原因子を中心とした遺伝学的性状を試験する。さらに、分離株の全ゲノム配列を、高速シーケンサーを用いて取得する。本菌のゲノムサイズは4.5-5 Mbであるため、複数の菌株を別々に標識して、同時に配列決定する。R6年度に新たに実施する項目として、培養細胞を用いた試験があるため、本菌の運動性の発現にも着目し、運動性発現株と非発現株で培養細胞を用いたE. albertiiの病原性評価試験の実施を目指す。
細胞を用いた試験を実施するため、必要経費を次年度に繰り越した。
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International Journal of Food Microbiology
巻: 414 ページ: 110616
10.1016/j.ijfoodmicro.2024.110616.
Journal of food protection
巻: 87 ページ: 100249
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