研究課題
令和2年度は、①全ゲノム解析の技術習得・環境整備、及び②全ゲノム解析用のEscherichia albertiiの菌株集団の構築を目指した。【①全ゲノム解析の技術習得・環境整備】全ゲノム解析に用いるゲノムライブラリーの作製法、及び次世代ゲノムシークエンサー(NGS)の操作技術を習得した。NGSで得た全ゲノムデータを最初に解析するソフトであるCLC Genomics Workbenchも操作できる様になった。本研究ではCLC Genomics Workbenchで解析後、core genome上の一塩基多型(SNP)を抽出するために、スクリプト言語であるRubyでのプログラムを実行する予定である。当初の計画ではパーソナルコンピューターでRubyプログラムを実行する環境として、オペレーティングシステム(OS)Linuxを用いる予定であった。しかし、Linux環境の構築後に不具合がしばしば発生したために、Mac OSを使用することに変更した。なお、Rubyを用いたプログラミングについても、本研究で必要となる範囲で行える様になった。【②全ゲノム解析用のE. albertiiの菌株集団の構築】本研究では、既に収集済である様々な由来の750菌株以上のE. albertiiについて、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)法を用いたクラスター解析を行い、合計で250菌株程度になる様に各クラスターから偏りなくE. albertiiを選ぶことで遺伝的多様性が高い菌株の集団を作る予定である。令和2年度は約500菌株についてPFGE法を実施したが、一部の菌株についてPFGE法が終わらなかったために、現時点では全ゲノム解析用のE. albertiiの菌株集団を構築できていない。
3: やや遅れている
当初の計画では、令和2年度は収集済である様々な由来の750菌株以上のE. albertiiの全てについて、PFGE法を用いたクラスター解析を行う予定であった。しかし、全ゲノム解析の技術習得・環境整備を優先的に進めたため、約1/3の菌株についてPFGE法が完了しなかった。
【令和3年度・6月まで】令和2年度に完了しなかった研究を終わらせる。約250菌株のE. albertiiについてPFGE法を行う。【令和3年度・7月以降】全ゲノム解析の技術習得・環境整備が予定より早く進み、令和2年度で完了した。そのため、当初の研究実施計画で令和3年度に行うことになっていた研究について、令和4年度への持ち越しは想定していない。具体的には、遺伝的多様性が高い菌株の集団をNGSにより全ゲノム解析し、得られたデータをリファレンス配列にマッピングしてSNPを検出する。検出した全SNPからcore genome上のSNPを用いて系統学的解析を行い、E. albertiiの正しい進化系統群(PG)への分類法を確立する。更に、全ゲノム解析を行わずにE. albertii菌株をPGに分類できる様にするために、core genome上のSNPの中から各PGに特異的なSNPを幾つか選ぶ。選んだSNPに対して簡易なSNP検出法であるamplification refractory mutation system PCR(ARMS-PCR)法を設計する。その後、全ゲノム解析を行わなかった残り菌株のE. albertiiについてもARMS-PCR法によりPGに分類する。【令和4年度】令和3年度の進捗状況を基に研究計画を変更する必要があるかを判断する。現時点では、①E. albertiiの各PGについて同定法の確立、②E. albertiiのPG分布状況を利用した感染経路の推定、及び③地方自治体等への研究成果の普及を行う予定である。
当初の計画では、令和2年度内に全ゲノム解析用のE. albertiiの菌株集団の構築を終え、一部の菌株について全ゲノム解析を開始する予定であった。しかし、令和2年度内で全ゲノム解析を行う菌株集団の構築が終わらなかったため、全ゲノム解析用の試薬を購入する必要が無かった。令和3年度には全ゲノム解析を開始するので、令和2年度の全未使用額を使って試薬を購入する予定である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Journal of Food Protection
巻: 83 ページ: 1584-1591
10.4315/JFP-20-042