本研究では、潜在的なレジオネラ症患者を積極的な喀痰培養検査によって診断し、その患者実態の把握を通じて、感染源を明らかにする。国内における届出患者の診断の大半が尿中抗原検査によるものであるが、従来の尿中抗原検査試薬はLegionella pneumophila血清群1(Lp1)以外の菌種・血清群に対する感度は著しく低いため、Lp1以外のレジオネラ属菌に感染している患者は把握されていない。したがって、現在まで、国内において、Lp1以外を原因菌とする潜在的なレジオネラ症患者の実態はよくわかっていない。 これまでに、本研究を実施するにあたり、当所における倫理審査委員会の承認を得た。また、レジオネラ症を疑う患者の喀痰を含む呼吸器検体を確保するため、県内1か所の医療機関に協力を依頼し、当該医療機関における倫理審査委員会の承認を得た。もう1か所の医療機関についても、協力を得るため現在調整中である。今後、さらに1か所の医療機関へ協力を依頼する予定である。 本研究開始前(2012年から2019年)に当所に搬入された呼吸器検体(175症例185検体)について、レジオネラ属菌検査の結果を解析した。尿中抗原によってレジオネラ症と診断された168検体のうち、63検体(37.5%)から菌が分離され、すべてLp1であった。一方、尿中抗原が陰性であったレジオネラ症疑い患者から採取された17検体のうち、2検体からLp2が分離された。したがって、Lp1以外を原因菌とする、従来の尿中抗原検査では診断できない潜在的なレジオネラ症患者の存在が示唆された。
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