研究課題
本研究では、潜在的なレジオネラ症患者を積極的な喀痰培養検査によって診断し、その患者実態の把握を通じて、感染源を明らかにする。国内における届出患者の診断の大半が尿中抗原検査によるものであるが、従来の尿中抗原検査試薬はLegionella pneumophila血清群1以外の菌種・血清群に対する感度は著しく低いため、L. pneumophila血清群1以外のレジオネラ属菌に感染している患者は把握されていない。したがって、現在まで、国内において、L. pneumophila血清群1以外を原因菌とする潜在的なレジオネラ症患者の実態はよくわかっていない。本研究を実施するにあたり、当所における倫理審査委員会の承認を得た。また、レジオネラ症を疑う患者の喀痰を含む呼吸器検体を確保するため、県内2か所の医療機関に協力を依頼し、当該医療機関における倫理審査委員会の承認を得た。2012年以降に当所に搬入された呼吸器検体(189症例201検体)について、レジオネラ属菌検査の結果を解析した。尿中抗原によってレジオネラ症と診断された177検体のうち、65検体(36.8%)から菌が分離され、すべてL. pneumophila血清群1であった。一方、尿中抗原が陰性であったレジオネラ症疑い患者から採取された24検体のうち、2検体からL. pneumophila血清群2が分離された。したがって、L. pneumophila血清群1以外を原因菌とする、従来の尿中抗原検査では診断できない潜在的なレジオネラ症患者の存在が示唆された。
3: やや遅れている
医療機関の協力を得るのが遅れ、研究体制の構築に時間を要した。
得られた呼吸器検体について、積極的に培養検査や遺伝子検査を実施し、検査診断の確定に取り組む。臨床分離株と当所に保存してある環境分離株の系統解析を実施し、患者の行動調査と合わせて、とりわけLp1以外を原因菌とするレジオネラ症患者について、その感染源を解明する。また、喀痰検体のメタゲノム解析を実施し、尿中抗原陰性の肺炎患者の病因物質を特定する。
機器の納期が遅れたため、当該年度内に支出できなかった。次年度の早い段階で、機器を購入する予定である。
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