研究課題/領域番号 |
20K18923
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研究機関 | 富山県衛生研究所 |
研究代表者 |
安川 和志 富山県衛生研究所, 化学部, 主任研究員 (00737835)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 遺伝子型別 / 三重鎖DNA / レジオネラ属菌 / 病原性細菌 |
研究実績の概要 |
細菌感染による食中毒や感染症等の発生時には、「起因菌の同定」と共に「菌株の型別」を実施する必要がある。本研究は、微生物の染色体DNA上に存在するポリプリン-ポリピリミジン(PolyR)配列情報を利用した遺伝子型別方法論の確立と簡便で迅速な検査法への応用を目的としている。前年度、レジオネラ属菌をモデルに染色体DNA配列中に存在するPolyR配列のデータセットを作成し、菌株識別能力を評価した結果、本遺伝子型別法は既知の遺伝子型別法(例えばMulti locus sequence typing法を代表とする遺伝子配列の解析等)と比較して、菌株識別能力(D index)が高い結果を得た。 この結果を受けて、令和3年度は以下の実験を実施し結果を得た。 1.独自開発した三重鎖DNA形成温度の予測式を利用して、染色体DNA上に存在するPolyR配列を三重鎖DNAの形成によって検出が可能なモレキュラービーコン(MB)の設計と反応条件を検討した。しかしながら、5’末端と3’末端にそれぞれ蛍光色素(FAM)とクエンチャー(BHQ)を修飾したMBでは、検出感度が低く実用化に向けて更なる感度の向上が必用とされた。 2.検出感度の向上を目的に、PolyR配列の三重鎖DNA形成をトリガーとしたローリングサークル増幅(RCA)反応の検討をした。鋳型の環状一本鎖DNA配列には増幅に伴いグアニン四重鎖が形成されるようにデザインした。グアニン四重鎖の配列は、既知の9種類の配列からチオフラビンTと結合させて最も高い蛍光強度を示した配列を選択した。今後、三重鎖DNA形成条件とRCA反応の最適化を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定通り、独自開発した三重鎖DNA形成温度の予測式を利用して、染色体DNA上に存在するPolyR配列を三重鎖DNAの形成によって検出可能なモレキュラービーコンの設計を実施した。しかしながら、十分な検出感度が得られなかったため検出系に関する更なる検討が必要となり検出系の構築には至らなかった。また、令和3年度は行政検査等に多くの時間を要したため研究業務に十分な時間を確保できなかった。 以上の点から、やや遅れていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
染色体DNA上に存在するPolyR配列を三重鎖DNAの形成をトリガーとしたローリングサークル増幅反応の検討を実施する。また、他の病原性細菌等について染色体DNA上に存在するPolyR配列の解析を行いデータベースの構築を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究活動に必要な旅費や学会参加費を使用しなかった。また、研究の進捗の遅れにより予定していた論文の投稿を実施できなかった。 今後、三重鎖DNA形成領域の検出系構築の実験費用および成果報告に要する旅費、学術雑誌への投稿料として使用する。
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