研究課題/領域番号 |
20K18928
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研究機関 | 特定非営利活動法人喜界島サンゴ礁科学研究所 |
研究代表者 |
安西 耕 特定非営利活動法人喜界島サンゴ礁科学研究所, 研究部門, 特別研究員 (40869038)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | カルシウム摂取量 / 骨粗鬆症 / 骨密度 / 喜界島 / 徳之島 / 閉経後女性 / 疫学 |
研究実績の概要 |
1)研究概要 女性は閉経後に女性ホルモンが低下し骨粗鬆症のリスクが高い。しかし、閉経後の女性がどのぐらいカルシウムを摂取すれば、骨粗鬆症が予防でき るのか分かっていない。私たちは、喜界島での水質調査によって島民が高カルシウム濃度の水道水に暴露されている事を明らかにしてきた。本研究では、カルシウム摂取量の多い喜界島と徳之島(伊仙町)の閉経後の女性を調べ、カルシウム摂取の増加によって骨粗鬆症を予防できるのか検証する。さらに、カルシウムの過剰摂取が引き起こしうる疾患(尿路結石、胆石、心血管疾患)の発症率をカルシウム摂取量で比較する。本研究は閉経後のカルシウム摂取のガイドラインの確立の 一助となり、本邦における骨粗鬆症の予防に寄与すると考える。 (2)研究の学術的背景 高齢化社会となり、寝たきりの原因となる転倒・骨折の原因となる骨粗鬆症が増加している。特に女性は閉経後に女性ホルモンが低下し骨粗鬆症のリスクが高く、閉経後のカルシウムの摂取が重要とされている。しかし、日本において骨粗鬆症の予防を目的としてカルシウム投与を行なった大規模な無作為化臨床試験は行われていない。そのために、骨粗鬆症や骨折の予防のために必要なカルシウム摂取量を導き出す研究が必要とされている。一方で、サプリメントによるカルシウムの過剰摂取が原因で、尿路結石や心血管系のイベントの発症率の上昇が報告されている。そのため、米国では積極的なカルシウムサプリメントの摂取は推奨されていない。 閉経後のカルシウムの不足と過剰摂取はともに社会問題となっている。しかし、日本人の食事摂取基準(2015年版)では15歳以上の女性の1日の推奨摂取量は1日 650mgで統一され、閉経による体の変化は考慮されない。骨粗鬆症のリスクの高い、閉経後の女性の至適なカルシウム摂取量 を解明する研究が必要とされている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の影響で本疫学研究は当初の研究計画よりも2年ほど遅れている。 (遅延の詳細) (1)疫学データを喜界島と徳之島で行われる住民健診(厚生連健診・医師会健診)から集積する予定であったがCOVID-19の全国的な感染の影響で健診の日程変更や中止があり、データの集積の開始が出来たのは2022年度となった。(2)飲水のカルシウム濃度を戸別訪問にて測定する予定であったが、コロナ蔓延防止の観点 から、戸別訪問をしない計画へ変更した。 (3)本研究では、正確な骨密度の測定のために喜界島・徳之島の医療機関で上腕骨のレントゲンを利用した骨密度測定 (DEXA法)を予定していた。しかし、離島 (喜界島・徳之島)は医療体制が脆弱であるため、緊急性のない本研究による島民の医療機関でのレントゲン撮影は COVID-19感染リスクを下げるためにも行わず、骨密度測定は医療機関でのレントゲン検査から検診会場での骨密度超音波検査へ研究計画の変更を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度も喜界島と徳之島(伊仙町)で行われる住民健診(JA鹿児島厚生連健診・郡医師会健診)から骨密度や健診データを集積する予定となっている。また、運動による影響を検討するため、今後は運動習慣に関する項目も追加する予定である。 2022年度に集積した本研究のベースラインデータの結果は、2023年度に開催される骨粗鬆症・公衆衛生・運動療法などの関連学会で発表し、また骨粗鬆症関連雑誌に論文を投稿する予定となっている。 2022年度(2023年2月)は、喜界島と徳之島で住民向けの本研究の結果報告会と骨粗鬆症予防の講演会を実施したが、2023年度も継続して結果報告会と講演会を実施する予定である。また、本研究で得た知見を利用し、喜界町・伊仙町の行政機関と連携しながら、高齢者を対象に骨粗鬆症予防の啓発活動を継続していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の全国的な感染拡大の影響で本疫学研究に約2年の遅れ生じており、本来2022年度に使用する予定であった旅費や人件費が2023年度へ持ち越しとなった。
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