研究課題/領域番号 |
20K18930
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菅原 由美 東北大学, 医学系研究科, 助教 (20747456)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 震災後の間接死亡の変化 / パーソナリティ / 虚血性心疾患死亡リスク |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、一般地域住民を対象とした大規模コホート研究のデータを用いて、震災前の社会経済的要因、生活習慣 心理的要因と震災後の死亡リスクの変化との関連についての前向きコホート研究を実施し、リスク要因の評価及びリスク要因の集積による健康への影響を解明することである。 2020年度前半は、人口動態調査死亡票データの取得のため、厚生労働省審査解析室に調査票情報の提供に係る申出を行った。 2020年度後半は、既存のデータを用いた探索的研究として、心理的要因の一つであるパーソナリティと虚血性心疾患死亡リスクとの関連について検討した。曝露は、Eysenk Personality Questionnaire(EPQR)によるパーソナリティで、外向性、神経症傾向、非協調性、社会的望ましさの4尺度で評価した。EPQRの回答に基づいて、対象者を4分位に分類した。統計解析では、パーソナリティの各尺度の最小4分位群を基準として、他の4分位群における虚血性心疾患死亡リスクの多変量調整ハザード比(95%信頼区間)を算出した。調整項目は性、年齢、BMI、学歴、婚姻歴、高血圧・糖尿病の既往、喫煙歴、飲酒歴、歩行習慣、自覚ストレスの有無とした。震災後の死亡リスクの変化を検討するため、2011年3月11日を基準として、震災前4年、震災後4年の虚血性心疾患死亡リスクについて比較した。その結果、震災前4年間の虚血性心疾患死亡の多変量調整HR(95%信頼区間)は、神経症傾向では、神経症傾向が低い群と比較して、神経症傾向が高い群で虚血性心疾患死亡リスクが有意に増加する傾向が見られた。一方、震災後4年間は、その関連は弱くなった。また、パーソナリティの他の尺度と虚血性心疾患死亡リスクに関連はみられなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
厚生労働省審査解析室に申出していた調査票情報の提供依頼に対し、承認が遅延したため、2020年度内に解析用データベースの作成が終了できなかった。しかし、パーソナリティと虚血性心疾患死亡リスクについて分析を実施し、今後の解析計画の参考とすることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
調査票情報の提供依頼は、2021年4月6日付けで承認された。今後、人口動態調査死亡票データの提供を受けて、解析用データベースの作成を行う予定である(7月末まで)。その後、震災前の社会経済的要因、生活習慣および心理的要因と死因別死亡リスクとの関連についてCox比例ハザードモデルを使用し、解析する予定である。その際、(1)地域別(内陸、沿岸)による比較、(2)男女別による比較、(3)年代別比較を行う。また、「リスクの集積モデル」を構築し、災害後の健康影響を予測すること、震災後に死亡リスクが高くなる集団を同定することを目標とする。また、研究結果は、2021年度の第80回日本公衆衛生学会(12月21日~23日)で報告することを予定している。さらに、成果について、論文化を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、厚労省から調査票情報の提供を受け、研究対象者における死因情報を調査する。そのため、提供を受けた情報について、宮城県コホート、大崎国保コホートそれぞれのデータベースにリンクし、解析用データベースを構築する作業を行う必要がある。この作業にあたるものとして、人件費の確保に計上の大半が充てられる。これは本研究実施のために必要不可欠な経費である。
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