研究課題/領域番号 |
20K18931
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 豪竜 京都大学, 医学研究科, 研究員 (20867965)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 新型コロナウイルス感染症 / ワクチン / かかりつけ医 / 歩数 / 在宅勤務 / うつ / 高齢者 / 認知症 |
研究実績の概要 |
JAGESデータを用い、かかりつけ医の有無や医師患者間コミュニケーションの質が、高齢者の肺炎球菌ワクチン及びインフルエンザワクチンの接種率とどのように関連しているか調べ、Journal of Epidemiologyに論文が掲載された。分析の結果、かかりつけ医がいる高齢者は、いない人に比べて肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンの接種率が約2倍高いことが明らかになった。このほか、医師が患者の話を聞く姿勢や、患者がわからないことを医師に質問できること、治療方針を医師と患者が相談して決めるスタイルも、肺炎球菌ワクチンの接種率の上昇と関連していた。 また、健康アプリ「カロママ」のユーザーデータを分析し、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う緊急事態宣言期間中の歩数の減少や在宅勤務の実施がうつ傾向のリスクとどのように関連しているか調べ、Occupational & Environmental Medicineに論文が掲載された。分析の結果、緊急事態宣言期間中に歩数が減少した人や労働時間が増加した人はうつ傾向のリスクが高かったが、在宅勤務を新たに開始した人はそれ以外の人と比べてうつ傾向のリスクが17%低かった。 本研究課題の中心となる、操作変数法を利用して身体活動が高齢者の認知症の発症に与える影響を調べる研究については、JAGESの2013-16年のコホートデータを使って分析を行い、国際誌に投稿したが、フォローアップ期間が短いなどの理由により査読後リジェクトとなった。このため、2013-19年の6年間のフォローアップデータを入手し、査読コメントに対応したうえで、再度同誌に投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予期していなかった事象として、新型コロナウイルス感染症の流行がある。同感染症の流行は、高齢者のみならず、全ての年代の生活様式を大きく変え、健康に影響を及ぼしており、公衆衛生上の重大な問題である。このため、当初予定していなかったが、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種に示唆を得るため、JAGESデータを用い、かかりつけ医の有無や医師患者間コミュニケーションの質が、高齢者の肺炎球菌ワクチン及びインフルエンザワクチンの接種率とどのように関連しているか分析を行った。 また、本研究課題は高齢者の身体活動に関心があるため、健康アプリ「カロママ」において高齢者を含むユーザーのデータを分析し、緊急事態宣言期間中の歩数の減少を規定する要因やうつ傾向との関連を調べた。 いずれの研究も国際誌に採択され、本研究課題はおおむね順調に進捗しているものと考えている。 一方、本研究課題の中心となる、操作変数法を利用して身体活動が高齢者の認知症の発症に与える影響を調べる研究については、JAGESの2013-16年のコホートデータを使って分析を行い、国際誌に投稿したが、フォローアップ期間が短いなどの理由により査読後リジェクトとなった。このため、2013-19年の6年間のフォローアップデータを入手し、査読コメントに対応したうえで、再度同誌に投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
操作変数法を利用して身体活動が高齢者の認知症の発症に与える影響を調べる研究に関して、2013-19年の6年間のフォローアップデータを入手し、再度国際誌に投稿する。 また、食事と認知症の関連がしばしば指摘されていることから、健康アプリ「カロママ」のユーザーデータを活用し、緊急事態宣言期間中の生活と食事の変化の関連を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行により、当初予定していたJAGESと介護保険データベースの連結作業が遅れているため、余剰が生じた。一方、同感染症の流行に関連した論文を2本執筆し、英文校正費及びオープンアクセス費を支出した。また、在宅勤務のために、ノートパソコンを1台購入した。 次年度にデータの連結作業に要する費用を支出するとともに、同感染症関連の論文出版等に要する費用を支出する予定である。
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