研究課題/領域番号 |
20K18933
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
伊角 彩 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 日本学術振興会特別研究員 (70773175)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 子ども虐待予防 / 子育て支援 / ランダム化比較試験 |
研究実績の概要 |
虐待が増加の一途をたどる日本においては早期からの虐待予防が不可欠である。これまではハイリスクアプローチが主であったが、虐待のリスクは様々なレベルで併発し変動的であることから、虐待を減らすにはすべての親を対象としたポピュレーションアプローチで子育てに関する知識やスキルを全体的に向上させる必要がある。また、すべての親に役立つ子育て支援を届けるためには、個々の状況に応じてコンテンツの個別化を図ることが重要である。そこで、本研究は母親や家庭の状況に応じて個別化された子育て支援が虐待予防に効果があるかを、ランダム化比較実験(RCT)を用いて明らかにすることを目的とした。具体的には、産科医療機関で助産師外来を受診する妊娠36週以降の母親をリクルートし、同意が得られた母親をランダムに介入群と対照群に割り付け、介入群には申請者やその研究チームが東京都と大学研究者の協働事業において開発した子育て支援ウェブサイトを、対照群には既存の子育て支援情報をリクルート時に提供する。それらの2群間で、生後1年間の①赤ちゃんへのボンディング(赤ちゃんをかわいいと思う気持ち)、②産後うつ、③育児行動、④援助希求行動、⑤赤ちゃんの泣きや睡眠に対する認識がどのように異なるかを検証する。 本年度は、まずRCTを行うために調査票作成・倫理審査申請の準備を行い、東京医科歯科大学周産・女性診療科および東京都立大塚病院産婦人科にてリクルートのための打ち合わせを行った。東京医科歯科大学の倫理審査委員会の承認を得た後、同大学周産・女性診療科で12月にパイロット調査を行い、1月からリクルートを本格的に開始した。3月末までに54名の母親が研究に同意・参加している(同意率78.3%)。効果検証のために、リクルート時(妊娠36週)、出生時、生後3か月時に質問紙調査をオンライン(オンラインによる回答が難しい場合は紙媒体)にて実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、東京医科歯科大学周産・女性診療科に出産のために入院している母親250名を対象としていたが、その後より詳細な計画を立てる際、新型コロナウイルス感染症流行の影響も加味し、東京都立大塚病院産婦人科にもご協力を得てリクルートを行うこと、入院中ではなく妊娠36週での助産師外来を受診する母親400名を対象とすることに変更した。しかし、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、両病院でのリクルート開始が遅れ、都立大塚病院産婦人科に関しては本年度はリクルートが開始できなかったため、当初の計画より遅れが生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度は引き続き、東京医科歯科大学周産・女性診療科にてリクルートおよび介入を行う。東京都立大塚病院産婦人科では倫理審査委員会から承認が得られたら、新型コロナウイルス感染症の流行状況を加味した上でリクルートおよび介入を開始する。すべての研究参加者に対し、リクルート時(妊娠36週)、出生時、生後3か月時、1歳時点で質問紙調査を行う。アウトカム測定が終わり次第、データ入力・クリーニングを行い、個別化された子育て支援が虐待予防に対して効果があったかを明らかにするため、解析を開始する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大のためリクルート開始が遅れており、研究参加者への謝金が今年度必要としていた額より少なくなったため。次年度、研究参加者への謝金として使用する予定である。
|