研究課題/領域番号 |
20K18941
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
江口 尚 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (50722146)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 障害者雇用 / 心理的ストレス反応 / 産業保健 / 離職予防 / 職場の心理社会的要因 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、今後、増加する障害や疾病を抱えた労働者の健康管理に資するエビデンスを提供することにより、障害や疾病を抱えた労働者の働きやすい職場環境の醸成を目指すことである。そのため、本研究では、障害や疾病の有無、程度、種類が、労働者の心理的ストレス反応や循環器疾患リスクファクター、炎症性マーカーに影響するメカニズムを明らかにすることを目標としている。 研究期間中、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、研究協力先との調整が遅れていたが、今年度は、精神障害者を多く雇用する特例子会社から3年分のストレスチェックのデータと離職に関するデータ(約1100件)を入手する話し合いを進めることができ、それらを突合できる見込みが立った。そのため、1年間研究期間を延長させていただき、2023年度に倫理申請を行い、ようやく本格的な解析に進める見通しが立った。また、障害者や治療と仕事の両立支援が必要な労働者のメンタルヘルスに関する既存研究のレビューも進めた。さらに、健康診断結果とストレスチェックの結果の突合についても、これまでの打ち合わせによって、技術的には可能であることが確認できたため、当初の計画に従ってその実現に向けて準備を進めた。 データの入手が進まなかったため、既存のデータベースを活用して、当事者のレジリエンスに着目したデータ解析を行い、病気や障害を理由に働き方に制約のある労働者と心理的ストレス反応の関係にレジリエンスが及ぼす影響に関する論文の執筆を進め、論文投稿を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究を実施するには、ストレスチェック、健康診断結果、人事データの突合が必要であるが、新型コロナウイルス感染症の影響に加え、調査協力先との共同研究の契約等に時間を要してしまった。どのようにデータ解析を行うかについて、調査協力先のニーズを把握するために、2022年10月から3月にかけて、毎月先方とミーティングを行い、詳細を詰めた。ようやく、研究協力先のデータを確認し、それを収集する見込みが立ち、倫理委員会への申請を行うことができる段階に至った。データの突合等ができれば、障害者手帳の所持やその種類の心理的ストレス反応や、職場の心理社会的要因、離職への影響など、解析計画はできているため、倫理委員会の承認さえ得ることができれば研究を進めることができる予定である。尺度開発については、調査協力先での新規の調査は難しいためインターネット調査に切り替えを検討する。一方で、既存のデータベースを活用することにより、働く上で支援を必要とする労働者のレジリエンスと心理的ストレス反応に関連した論文執筆を進め、投稿することができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を延長した2023年度は、「研究実績の概要」「現在までの進捗状況」で報告した状況を踏まえて、調査協力先からのデータ収集のための倫理委員会への申請を行う。倫理委員会申請後、速やかにデータ解析を進め、障害者手帳の有無と、その種類など障害が労働者のメンタルヘルスに与える影響について研究を進める。尺度開発については、調査協力先での新規の調査は難しいためインターネット調査に切り替え、倫理審査の申請を行い、研究を進めることにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度までの研究期間の間に、調査が実施できなかったことにより繰り越しにより次年度使用額が生じた。研究期間を1年間延長した2023年度は、調査方法を切り替えたことによるインターネット調査実施費用、データ解析後の国際誌への論文投稿のための英文校正費、論文掲載費、成果の学会報告のための旅費、学会参加費に使用する予定である。
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