研究課題
本研究の目的は、差別を受けた経験と心理的ストレスの関連に及ぼす影響を明らかにすることであった。そのために、インターネット調査会社のパネルを利用して、障害のある労働者500名、一般労働者1500を対象に、2回(2023年11月と2024年3月)調査を実施する縦断研究を行った。障害のある(障害者手帳を所持している)労働者と一般労働者を比較することにより、主観的差別尺度日本語版(数値が高いほど差別を感じている)の信頼性、妥当性の検証や、職場の心理社会的要因と心理的ストレスとの関連を検討した。主観的差別は、障害の有無に関わらず心理的ストレスと関連していた。障害のある労働者においては、主観的差別尺度は、知的、精神、身体の順に高かった。主観的差別と心理的ストレス反応との関係における心理社会的安全風土の影響を検討したところ、障害のある労働者においては、心理社会的安全風土が主観的差別と心理的ストレス反応の関連を有意に弱めていたが、障害のない労働者においてはその関連は確認できなかった。本研究結果は、主観的差別を軽減するような対策(合理的配慮)を行うことが、障害のある労働者の心理的ストレス反応を軽減することを示唆している。さらに、合理的配慮の実施に当たっては、心理的社会的安全風土尺度が参考になる可能性がある。また、職場の心理社会的要因と労働者の健康(炎症反応)との関係をシステマティックレビューとメタアナリシスで検討した論文を公開した。メタアナリシスの結果からは、職場の心理社会的要因が炎症反応レベルでも影響していることを示唆していた。これらの結果から、障害のある労働者については、障害のない一般労働者よりも心理的ストレス反応が高い状況にあることが考えられるため、適切な合理的配慮が必要であることを示すことができた。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Journal of Psychosomatic Research
巻: 170 ページ: 111349~111349
10.1016/j.jpsychores.2023.111349