研究課題/領域番号 |
20K18955
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
乙丸 礼乃 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (00849416)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | social mixing pattern |
研究実績の概要 |
RSVは、特に5歳未満児において下気道感染症を引き起こすウイルスとして重要である。年長児や成人も感染し、地域全体への流行拡大に関与している可能性が指摘されている。飛沫感染や接触感染によって感染伝播が起きるとされているが、年長児や成人では軽症例も多く、流行拡大にどのような年齢層が関与しているか明らかではない。本研究では、RSVの地域流行拡大に関与する要因について明らかにし、 効果的な感染拡大予防策を考案することを目的としている。 東北大学医学系研究科微生物学分野では、2018-19年フィリピンビリラン島カイビラン地区で5歳未満児世帯を対象としたコホート研究を実施した。コホートに参加している家族が感染の機会となるような社会的接触をどの程度持つか検証するため、質問紙による調査を行い、データを解析した。調査では同居家族以外で週3回以上接触のある人物の年齢、接触がある場所などについて聴取した。過去に用いられた方法 (Prem K et al. 2017) を改変し、特に18歳未満の平均接触者数を推定した。 接触者は異なる世帯に居住する家族(親戚)、近隣住民、通学先生徒が主であった。2歳未満では、幅広い年齢の親戚との接触が多く認められたが、他の年代と比べ近隣住民との接触は少なかった。2歳から保育施設への参加年齢 (4-5才) までは親戚や近隣に住む同年代との接触と同程度に年長児とも接触していた。就学年齢以降は学校での同年代との接触が特に多くなるが、10才頃までは学校以外でも同年代との接触が多い傾向が続いた。学校での滞在時間が長くなる10歳頃からこの傾向は弱まり、学校での接触が主となっていた。 これらのことから、2-17歳の社会的接触は保育施設や学校での同年代との接触に限定されず、地域社会の様々な機会で起きるが、2歳未満は親戚の世話を受ける以外に17歳未満との接触はないと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度では、過去に採取したデータの解析の結果を実施することで調査方法や解析方法の確認を実施することができた。得られた結果を考慮し、さらなる解析を進める。
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今後の研究の推進方策 |
接触パターンは年齢層により多様であることから、地域内での流行の拡がりやすさも一様ではない。RSVの主な感染者は5歳未満児であるが、なかでも重症化しやすい乳児の感染予防が特に重要であり、現在開発が進んでいるワクチンもこれらの年齢層を保護することを目的としている。これまでの結果を踏まえ、今後は社会的接触パターンと流行拡大、将来導入される可能性のあるワクチンの効果の関連について解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症流行の影響を受けて調査の開始および共同研究機関への出張を延期したことによる。次年度使用額は新たなデータの収集や解析を進めるために用い、研究目的の達成を目指す。
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