研究課題/領域番号 |
20K18955
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
乙丸 礼乃 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (00849416)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | RSV |
研究実績の概要 |
Respiratory Syncytial Virus (RSV) は呼吸器感染症の原因ウイルスであり、乳児が感染すると重症化しやすいことが知られている。2歳までにほとんどの子供が一度は感染するが、年長児や成人も再感染し、伝播に関わっていることがわかっている。本研究はRSV流行拡大における各年齢の役割や、効果的な流行拡大予防について検討することを目的としている。
本年度は、先行研究を参考にRSV感染症の流行動態に関するモデルを作成し、経胎盤移行抗体の影響や年齢別の入院率、再感染率を考慮してRSV感染症による入院数や感染者数を推定した。これまで得られた流行データと手法を統合し、モデルの改変を含めた検討を行った。必要な変数のうち、季節性に関する変数については、先行研究と事前の検討に基づいて決定した。データとして、人口、接触行列、年齢別のRSV入院数を用いた。入院数については、ベトナムで実施している急性呼吸器感染症サーベイランスで得られたデータのうち、2018年までの8年間のRSV検出数を使用した。接触行列については、過去に発表された数値をモデルの年齢構造に合わせて一部改変して使用した。結果として得られる月別および年齢別の推定入院数と実際の入院数データを比較した。
8年の推定期間中、ピークのある月は4年で一致した。一致していない年では最大2ヶ月の差が見られた。推定月別入院数と実際の月別入院数の相関係数は0.64であった。次に、この時得られた推定結果をベースラインとして使用し、経胎盤移行抗体による感染防御が継続する日数を変化させた場合の推定結果と比較した。その結果、経胎盤移行抗体の防御が長く継続する想定のときほど、1歳での感染者数および入院数が増加していた。この傾向は、妊婦ワクチンやモノクローナル抗体などの導入を考慮した先行研究の結果と一致していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新しくデータや検体を収集するための準備も実施しているが、新型コロナウイルス流行開始後からRSV流行の季節性が非定型的となっている影響で、まだ収集できていないデータがある。解析と並行し、新しくデータが得られるよう事前の検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ワクチンなどによる感染予防対策を実施した場合、各年齢のRSV流行拡大における役割や、乳児の入院数がどのように変化するか解析する方針である。今回用いた方法では、他国での先行研究によって得られた数値をベトナムの流行データに合わせて改変して使用しているが、さらに改善する必要がある。その後、ワクチンやモノクローナル抗体による影響を解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新しくデータや検体を収集するための準備も実施したが、COVID-19の流行開始後からRSV流行の季節性が非定型的となっている影響で、まだ収集できていないデータがあるため、次年度使用額が生じた。次年度は、新しくデータが得られる場合はその検査試薬の購入に次年度使用額を充てる。また、これまで得られた解析結果の発表に使用する予定である。
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