研究課題/領域番号 |
20K18957
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡田 啓 東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (70847574)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 糖尿病 / 受診中断 / 臨床疫学 / 医療政策 |
研究実績の概要 |
研究代表者は、今回の研究テーマである、「糖尿病受診中断の予測因子探索と政策提言」について2021年度に1本の学術論文が国際誌に受理された。内容としては、以下の通りである。 背景としては、健診で糖尿病を指摘された後も、医療機関の受診率は低いことがある。健診後に未受診のリスク因子は、あまり知られてなかった。機械学習を用いてより「良く」「効率的に」、糖尿病の受診勧奨後の未受診を予測するモデルの構築を試みた。 研究結果としては、JMDC データベースの2019 年10 月までの健診情報を利用して健診から半年以上追跡が可能な成人のうち、健診で糖尿病の診断基準(HbA1c 値が6.5%以上かつ空腹時血糖値が126 mg/dL 以上)を満たした10,645 人を解析対象とした。このうち5,450 人(51.2%)が受診勧奨にも関わらず、糖尿病に関して医療機関を受診しなかった。対象を4:1 に分け、前者をモデル構築用、後者をモデル検証用の集団とし、モデル構築用の集団でLasso 回帰(1 標準誤差ルール)を行い、未受診を予測する重要な因子を39の候補因子から同定した。対照となる予測モデルは、13 個の因子を含む既存の予測モデルを用いた。Lasso 回帰で選ばれた予測因子は、(1)過去12ヶ月の受診頻度、(2)HbA1c 値、(3)脂質異常症薬処方、(4)降圧薬処方であり、この4つで予測したモデルの方が対照モデルの予測性能よりも予測能を示した。 本研究で機械学習によって得られた予測モデルは、健診で糖尿病を指摘後に未受診となるリスク因子を、機械学習を用いて因子をより少なく、かつより強力なものを同定したことである。本研究の結果を実装すると、日本全体における糖尿病患者の受診率が向上する可能性がある。 研究成果はアメリカ糖尿病学会誌「Diabetes Care」に掲載され、in pressとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は「新規スクリーニング糖尿病患者の受診勧奨後未受診の予測モデル構築」に関連した論文が、国際誌に受理された。これにより、「糖尿病受診中断の予測因子探索と政策提言」としての政策立案に関わる研究が遂行出来ており、本研究はおおむね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究費で追加で購入したデータベースなども活用して、「糖尿病受診中断の予測因子探索と政策提言」に関して、年齢層や腎機能に応じた対策を立案できるように、予測因子の同定を行い、更に踏み込んだ政策提言に役立つ研究を行う。具体的には、病院の診療情報としては検査データを含む病院ベースのデータ(JMDC, MDVなど)を用いて解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの蔓延下で進まなかった研究もあり、来年度はその分も含めて研究を完遂する。
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