研究課題/領域番号 |
20K18959
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
辻口 博聖 金沢大学, 医学系, 特任助教 (00723090)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 自閉症 / 栄養 / 子供 / コホート / 疫学 |
研究実績の概要 |
自閉症スペクトラム障害、特に軽度の障害(自閉症傾向)の発症が近年増加しているため、その早期発見による予防が重要である。自閉症傾向との関連が疑われる発現メカニズムとして、睡眠・覚醒状態といった生体リズムや活動パターンの障害が注目される。本研究では、①ウェアラブル・コンピュータによる生体リズム、活動パターンデータ等を用い、ASD傾向診断のための従来の内面的・主観的な方法を超え、早期発見のための全く新しい外形的・客観的な診断法を開発することを目的としている。また②自閉症傾向と密接な関係が考えられている社会的・物理的な環境との相互関係・因果経路を、コホート研究を中心とした時系列解析によって明らかにし、予防法の案出につなげることを目的としている。 昨年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により、フィールドでのコホートデータ取得に大きな制約を受けたため、すでに取得しているデータをもとにしたデータセットを構成、解析することにより、主に目的②を達成することを主眼とした。まずは、過去のフィールド調査で得た7-15歳の1276人の児童・生徒の横断データを用い、自閉症傾向と栄養素摂取状態との関連を解析した。その結果、自閉症傾向を有する児童・生徒においては、そうでない児童・生徒と比べ、より高い炭水化物摂取量が観察される一方、より低いタンパク質、ミネラル類、ビタミン類摂取量が観察された。同様の報告は過去においてもなされたことがあったものの、いずれも少人数でパイロット的になされたものであった。本研究は最も多いN数でなされたものであり、より高いエビデンスを提供するものである。この研究成果は国際英文誌において発表された。 より高いエビデンスを提供するため、さらに、まだなされていない縦断データでの解析も進め、同様の研究成果を得た。現在、国際英文誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により、フィールドにおける住民ベースでのウェアラブル・コンピュータ装着を伴うコホートデータ取得に大きな制約を受けた。 そこで、既存のデータをもとにした新たなデータセットを組むことにより、研究目的②の自閉症傾向と密接な関係が考えられている社会的・物理的な環境との相互関係・因果経路を、コホート研究を中心とした時系列解析によって明らかにすることにフォーカスした。 その結果は国際論文として発表されるなど、一定の成果をあげることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的②について、より高いエビデンスを提供するため、縦断データでの研究結果の国際英文誌での出版を目指すこととする。 また、研究目的①についても、新型コロナウイルス感染症の流行状況を注視しつつ、可能であればフィールド在住の子どもベースでのウェアラブル・コンピュータによる生体リズム、活動パターンデータ等の取得を進める。 また、代替手段として成人ベースですでに取得している活動量計、自閉症、感覚過敏に関するデータを用いたデータセットを構築することにより、生体リズム、活動パターンデータと自閉症傾向との関連を解析することも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は新型コロナウイルス感染症の影響によりフィールド調査ができず、旅費や調査費、データ入力費用がかからず、既存データによる解析・論文発表の費用支出にとどまったため、当初の想定よりも少ない支出額となった。 今年度は新型コロナウイルス感染症の収束状況によってはフィールド調査を再開し、調査費等に予算を充てることを検討する。
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