研究課題/領域番号 |
20K18965
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
綾仁 信貴 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90777939)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 院内暴力 / 粗暴行為 / 違反行為 / 精神科 / 医療安全 |
研究実績の概要 |
本研究の令和5年度は、令和4年度と比較して新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の影響がさらに緩和され、カルテ調査での施設訪問ができる回数が増え、また調査施設での研究協力者の協力のもと、データ収集作業を概ね予定通り進めることができた。全調査対象者538人(2018年01月01日から2018年06月30日に研究協力施設3施設の精神科に入院した全入院患者540人のうち、患者からの辞退希望等により除外された患者を2人を除く)の調査期間(2018年01月01日から2018年12月31日)中に発生した粗暴行為および違反行為の件数について、全体の6割にあたる323人の調査結果から、粗暴行為は132人に58384件、違反行為は166人に516件発生しており、全患者の40%が粗暴行為を、51%が違反行為を行っていることが明らかとなった。また粗暴行為および違反行為の内訳として、暴力は全体の17%に認められ、この頻度は海外における先行研究と同等の頻度であった。違反行為については、医療行為の拒否が最も多く、全患者の約3割で認められていた。疫学指標に基づいた発生頻度については、それぞれcrude rate(100入院患者あたりの頻度)は、粗暴行為、違反行為でそれぞれ178件および103件(95%信頼区間:163-192 および 144-171)であり、incidence(1000人日あたりの頻度)はそれぞれ25件および23件(95%信頼区間:23-28および21-24)という結果で、高い頻度で粗暴行為や違反行為が発生していることが明らかとなった。年度内でのデータ収集完了を達成できなかったため、研究協力者を3施設で募り、新たな3名を追加した9名の協力者とともに、研究機関を1年延長し、2024年度中のデータ収集完了、および結果を解析しての学会発表および論文執筆につなげる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年03月以降の新型コロナウイルス感染症の影響により、2021年の冬まで研究協力施設への訪問と現地での調査を行うことができず、また2022年度も感染対策に伴う訪問制限については緩和されつつも、研究調査施設でのクラスター発生等の理由で調査が行えないこともあった。2023年度以降は概ね予定通りのスケジュールで調査を行うことができているものの、これまでの遅れもあり、データ収集作業に遅れが生じているため。
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今後の研究の推進方策 |
研究協力施設においてデータ収集作業に携わることができる研究協力者を募集することで、2023年度末の時点で3施設において合計9名の協力者を募ることができた。またデータ入力についても、所属機関が実施する子育て支援の一環として研究補助員雇用の支援を受けることができ、データ入力作業についても今後加速化が見込まれる。2023年度末の時点で、現地でのカルテ調査による1次レビューの完了者は全対象患者の60%程度であり、研究協力者の増員もあり、今年度中のデータ収集完了とデータ入力完了、およびデータベースの構築を完了させることは可能と見込んでいる。1次レビュー完了後は完成したデータベースを元に2次レビュー(医師複数名によるデータ分類の妥当性の検証)を行い、データ固定後、速やかに解析、および論文化を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年03月以降の新型コロナウイルス感染症蔓延の影響はかなり緩和された結果、2023年度は2022年度と比較して研究協力施設への訪問と現地での調査の頻度を行うことができ、また調査による研究補助員に支払う謝金も昨年度よりは増加したが、前年度までの研究の遅れもあり、総合的には予定の金額を使用することができなかった。一方で現地調査できない状況に対して現地での協力者と遠隔で情報交換、データのやりとりを円滑に行うための設備投資としての物品費は予定よりも多く支出することとなった。1年延長した2024年度は遅れているデータ収集作業を加速化させるため、研究協力施設でデータ収集作業に携わることができる研究協力者を募り、研究調査のための訪問での旅費、および研究協力者への謝金として使用する予定である。
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