研究課題/領域番号 |
20K18967
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
佐田 みずき 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (00822652)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生活習慣病 / コホート研究 / 児童生徒 / 健康教育 / 食塩摂取 |
研究実績の概要 |
我が国の成人の食塩摂取量の平均値は大きく減少し、食塩摂取量の低下は血圧値の低下、脳血管疾患の死亡率の減少、さらには健康寿命の延伸へと貢献したと考えられる。しかしながら、未だに食塩摂取量には地域差が存在し、研究対象地域の秋田県や茨城県ではいまだ食塩摂取量が全国平均に比べて多い。一方で、児童期・思春期の食塩摂取の状況は十分に把握されていない。食塩に対する嗜好は小児期の食事の影響を強く受け、それには家族の影響が大きいことから、小児やその保護者に対するさらなる減塩対策が望まれる。本研究では、義務教育学校の児童・生徒及びその保護者を対象に、食塩摂取を中心とする食生活に関する実態調査として、尿検査、食生活に関する質問票調査等を継続して実施している。加えて、小児期からの生活習慣病予防に関する研究(Ibaraki Children’s Cohort Study:IBACHIL)において、同一対象者から収集した調査データを用いて、成人期の食塩摂取頻度を含む食習慣や体格・血圧と関連する児童期の食習慣・生活習慣について検討を進めている。 令和3年度は、令和元年度より副読本を活用した減塩を中心とする健康授業を開始している、秋田県某町の義務教育学校の一部の児童・生徒、及び保護者に対して、尿検査、食生活に関する質問票調査を実施した。これまでに得られたデータと学校健診の情報等とを突合し、児童・生徒の食習慣(特に食塩摂取状況)に対する教育効果の検証を行った結果、減塩のための知識や、食塩の過剰摂取に繋がる食習慣、尿検査より推定した食塩摂取量について、改善の傾向が認められた。現在、次年度以降の継続的な調査・検査について地域の教育関係者と協議を進めている。 また、IBACHILのデータセットをもとに、20歳代の食塩摂取頻度や体格・血圧に影響を与える小児期の食習慣・生活習慣に関して網羅的・縦断的な分析を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)食塩摂取を中心とする食生活に関する実態調査:小中学生への健康教育が行われている秋田県某町の義務教育学校において、一部の児童生徒、及び保護者を対象に、尿検査、食生活に関する質問票調査を実施した。 これらのデータと、過去に収集したデータ(令和元年度及び令和2年度の尿検査、食生活に関する質問票調査)とを突合し、分析用データセットを作成した。COVID-19流行前、年間指導計画通りに実施された令和元年度の教育効果を検証するため、当該年度の健康教育の前後で児童・生徒の食習慣(特に食塩摂取状況)の変化を比較した結果、減塩のための知識(町の健診受診勧奨や減塩・栄養改善のための活動、食塩の摂取目標量、減塩で予防できる病気)、食塩の過剰摂取に繋がる食習慣(汁物を飲む頻度、めん類の汁を飲む量、漬け物や味付けされたおかずにしょうゆやソースをかける頻度、味付けの好み)、尿検査より推定した食塩摂取量(田中式による推定1日食塩摂取量)において、改善傾向が認められた。引き続き、次年度以降の継続的な尿検査・質問票調査の実施とデータ収集体制について、教育委員会及び学校と打ち合わせを進めている。 2) 成人期の食塩摂取頻度や体格に関する分析:IIBACHILにおいて、過去に同一の対象者から収集したデータ(3歳、6歳、12歳、22歳、27歳)をもとに、小児期の食習慣・生活習慣に関する質問項目と、学童期及び青年期の食塩摂取頻度や体格・血圧に関する質問項目との関連について縦断的な解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、地域における食塩摂取を中心とする食生活に関する実態調査を実施するとともに、減塩を中心とする健康教育の児童・生徒及び保護者への教育効果の検証を行う。また、学童期及び青年期の食塩摂取頻度や体格・血圧に関連する小児期の食習慣・生活習慣について分析を進める。 これらの調査研究から得られた成果をもとにして、地域の教育関係者(学校等)や研究協力者と意見交換をしながら、小中学生に対する健康教育として学校現場で実用可能な教材の改訂作業や、学校事業及び保健事業に寄与する資料の作成を行う。このようにして得られた結果を取りまとめ、研究成果を発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の影響を受け、年度内に予定していた一部検査の実施が見送りとなったため。該当検査の実施可否については、次年度の感染状況を踏まえ、関係機関と改めて協議する。
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