我が国の成人の食塩摂取量の平均値は大きく減少し、食塩摂取量の低下は血圧値の低下、脳血管疾患の死亡率の減少、さらには健康寿命の延伸へと貢献したと考えられる。しかしながら、未だに食塩摂取量には地域差が存在し、研究対象地域の秋田県や茨城県ではいまだ食塩摂取量が全国平均に比べて多い。一方で、児童期・思春期の食塩摂取の状況は十分に把握されていない。食塩に対する嗜好は小児期の食事の影響を強く受け、それには家族の影響が大きいことから、小児やその保護者に対するさらなる減塩対策が望まれる。 本研究では、秋田県某町の義務教育学校の一部の児童・生徒、及び保護者を対象に、食塩摂取を中心とする食生活に関する実態調査を継続して実施している。令和5年度は、引き続き、尿検査、食生活に関する質問票調査を実施した。随時尿から推定した食塩摂取量(田中式による推定1日食塩摂取量)を確認したところ、児童・生徒(1-9年生)、保護者ともに、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の目標量よりも依然として高い値で推移していた。また、質問票の集計結果から、児童・生徒、保護者ともに、現在塩分を減らす努力を「しようと思うができない」人の割合が増加していることが示された。加えて、随時尿から算出したナトリウム/カリウム比(Na/K比、減塩とカリウム摂取を組み合わせて評価できる指標)と生活環境・食習慣との関連を検討したところ、家族構成や、家庭における主な調理者、味噌汁の摂取頻度が、Na/K比と関連していることが示された。 また、小児期からの生活習慣病予防に関する研究(Ibaraki Children’s Cohort Study:IBACHIL)において、同一対象者から収集した調査データを用いて、成人期の生活習慣(栄養表示を見る習慣や睡眠時間等)や健康状態と関連する小児期の食習慣・生活習慣について検討を進めている。
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