閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は、睡眠中に出現する上気道の狭窄・閉塞によって無呼吸となる疾患である。低酸素血症や交感神経系の亢進などを介して二次的に様々な病態を惹起するが、特に循環器疾患との関連が強く、突然死の原因ともなるとされるが、有病率が高いにも関わらず診断率が低いことが問題となっている。 法医実務では、予期せぬ突然死で、解剖しても肉眼的・顕微鏡的に明らかな致死的傷病変が認められない症例にしばしば遭遇するが、そうした症例の中にも未診断のOSASが含まれ、死因を構成する因子となっているのではないかと考えられる。本研究の目的は、臨床的に用いられている「OSASになり易さを評価する指標」を死体に当てはめ、それらと死因に相関があるかについて検討することである。 昨年度は新型コロナウィルス感染症の蔓延によって研究活動が著しく制限され、本研究の進行予定に大幅な遅れが生じた。よって本年度の主な予定は、昨年度から引き続いて過去の解剖症例から本研究の対象となるような症例の有無について検索することと、新たな解剖症例からのデータ採取となった。新・旧の解剖症例について、蓄積してきた解剖前CTデータから上気道の狭窄の程度を気道断面積の計測などで評価したが、症例数が未だ十分ではなく、さらに死後硬直の有無などによって気道断面積の正確な計測が困難となる場合もあり、現時点では未だ統計的な評価に十分なデータが得られていない。
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