研究課題/領域番号 |
20K18980
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
関島 秀久 三重大学, 医学系研究科, 助教 (60792447)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 塩化ベンザルコニウム / 炭素鎖長 / LC-MS/MS |
研究実績の概要 |
本研究では、塩化ベンザルコニウム(BAC)中毒死の法医学的診断基準の確立に重要なBACの毒性学的情報を得るために、炭素鎖の異なるBACの体内動態と臓器傷害性を比較し、BACの毒性発現機序と炭素鎖長との関係性を明らかにしていく。 2020年度では、研究計画通り、BAC急性中毒時の体内動態の特徴を明らかにするため、炭素鎖間および2つの用量間で比較検討した。具体的には、C12およびC14-BAC単独溶液、さらには市販製品を模倣した混合溶液を調製し、C57BL/6マウスに経口投与した。投与量は、半数致死量および半数致死量以下(法医症例を模倣)とし、投与から経時的に、血液および腎臓等の主要臓器、さらに消化管を採取し、血中および臓器中BAC濃度をLC-MS/MSにより解析し、以下の結果を得た。 半数致死量と半数致死量以下を比較したところ、BAC投与から実験終了時までの血中および臓器中BAC濃度推移が異なり、用量間で体内動態が変化することが明らかとなった。さらに炭素鎖間で比較したところ、半数致死量では血中および主要臓器中C12-BAC濃度がC14と比較して高い傾向であり、半数致死量以下では半数致死量時ほどの濃度差が認められなかった。BAC吸収部位と推定される小腸中BAC濃度の結果が上記結果と一致したことから、炭素鎖間での消化管吸収性の違いが体内動態に影響していると考えられた。加えて、主要臓器中濃度は、臓器間で異なることがわかり、BACによる影響が臓器間で異なる可能性があると示唆された。一方、混合溶液では、C12およびC14-BACの総量がC12-BAC単独の結果に近似し、炭素鎖の組成比と一致する傾向であった。 以上より、BAC急性中毒時の体内動態が、炭素鎖のみならず、用量によっても変化する傾向であることが明らかになり、その変化は毒性発現に影響を及ぼす可能性があると示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、半数致死量および半数致死量以下(法医症例を模倣)でのBACの体内動態を炭素鎖ごとに明らかにできた。そのため、おおむね順調に研究が進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、BAC急性中毒時の体内動態と炭素鎖との関係性を明らかにしていく。研究計画当初は、半数致死量と半数致死量以下の中間域の用量でも実施する予定であったが、比較評価が可能な濃度差を得ることが困難であることから、半数致死量以上での用量に変更し、C12およびC14-BACの体内動態が用量によりどのように変化するかを明らかにしていく。 また、BACの体内動態が、炭素鎖間および用量間で異なる傾向であり、その違いは臓器傷害の発現に影響を及ぼすと予想されることから、BACの臓器傷害発現と炭素鎖間との関係性を用量ごとに明らかにしていく。
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