本研究では、C14の炭素鎖を有する塩化ベンザルコニウム(BAC)がC12の炭素鎖を有するBACと比較して低濃度で毒性を発現すると仮説を立て、BACの体内動態と臓器傷害性を炭素鎖間で比較検証した。その結果、BACの体内動態や臓器傷害性は炭素鎖間で同等であり、本研究の手法では仮説通りの結果を得ることができなかった。一方、研究遂行の過程において、プログラムされた細胞死の一種であるアポトーシスを伴う急性肺傷害をBAC経口摂取後の新たな中毒機序として見出した。これらの成果は、BAC中毒死の法医学的診断基準の確立のための基礎的情報になると考えられる。
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