研究課題/領域番号 |
20K18982
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
堤 博志 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (50849114)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 薬物中毒 / バイオマーカー / 解糖系 / GABAA作動薬 / ジアゼパム / アストロサイト |
研究実績の概要 |
薬物中毒による死亡者は年々増加しており、法医学分野においても薬物中毒死の診断の重要性は高まっている。しかし法医診断をするうえで、薬物中毒死を客観的に診断する中毒の指標は原因薬物の濃度のみであるのが実情である。複数薬物が遺体より検出された場合、どの程度薬物が死因に寄与したのかの推定は困難となる。なかでも催眠鎮静薬である GABAA 作動薬は多くの事例で検出される。したがって薬物濃度以外に GABAA 作動薬中毒を推定できる客観的な指標があれば有用である。 この背景から、申請者はGABAA 作動薬中毒死を診断するバイオマーカーの探索に取り組んでいる。アストロサイトは中枢神経系で血液脳関門を形成しており、GABAA 作動薬中毒時に影響が及ぶことが推定される。当該年度はGABAA作動薬であるジアゼパムを投与したラットアストロサイト細胞株で施行したメタボロミクスにて、2,3-Bisphosphoglyceric acid、Glycerol 3-phosphate、Dihydroxyacetone phosphate、Sedoheptulose 7-phosphateがバイオマーカーの候補となることを見出した。4つのバイオマーカー候補代謝物は、いずれも解糖系およびその傍流に属しており、アストロサイトへのGABAA作動薬投与が解糖系へ影響を与える可能性が示唆された。 本結果は第106次日本法医学会学術全国集会にて発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
解糖系代謝物の濃度測定法の確立に向けた予備実験を施行している。
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今後の研究の推進方策 |
解糖系代謝物の濃度測定法の確立し、ジアゼパム投与ラットアストロサイト細胞株およびジアゼパム過量服薬ラットモデルにおける解糖系代謝物の濃度変化を測定する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
該当年度はバイオマーカー候補分子を探索するためのin vitroでのメタボロミクス実験を主に施行した。購入予定であった高額機器である小動物用のパルスオキシメーターについては次年度以降に購入予定である。
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