この研究の目的は、エタノールまたはその代謝物以外の化合物がアルコール飲料の摂取のバイオマーカーとして使用できるかどうかを調査することであった。このために、まずビール、ワイン、日本酒、ウイスキーなどのアルコール飲料を分析した。 次に、飲酒者の尿中に、異なる飲料からの摂取したアルコール飲料由来の異なる成分が検出されるかどうかを調査するために飲酒研究を行った。その結果、ビール飲用者からホルデニン、ビール、ワイン、日本酒飲用者からエチルグルコシド、ワイン飲用者からリンゴ酸エステル、ワインとウイスキー飲用者からシリンジン酸など、いくつかの候補を検出した。 また、飲酒を終了した後の尿中エタノール濃度、経時変化とともに、どの化合物が飲酒者の尿中に長く残るかを追跡した。最初はエチルグルコシドが有望な候補であると考えた。なぜなら、日本酒飲用者の尿中に高濃度で検出されたからである。 しかし、問題はエチルグルコシドがウイスキーを含むほとんどすべて酒種の飲酒者の尿中に検出されたことである。ウイスキーにはエチルグルコシドが含まれていないため、エチルグルコシドが腸内でエタノールと糖分(グルコースなど)から生成されている可能性があると考えた。私たちは実験によりエチルグルコシドが体外でエタノールとグルコースの組み合わせから生成されることを示した。 エチルグルコシドはアルコール飲料の摂取の重要なバイオマーカーとなり得るが、特定の飲料には限定されない。したがって、今後はリンゴ酸エステルに注目する。なぜなら、これはワイン飲用者の尿中にのみ存在するため、ワイン摂取の特異的なバイオマーカーである可能性があるからである。
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