| 研究課題/領域番号 |
20K18990
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| 研究機関 | 科学警察研究所 |
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研究代表者 |
大塚 麻衣 科学警察研究所, 法科学第三部, 研究員 (90801580)
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| 研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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| キーワード | 液体クロマトグラフィー質量分析 / 化学剤 / 誘導体化 |
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| 研究実績の概要 |
神経剤やびらん剤などの化学剤は高い毒性を持つことから、テロや事件で用いられた際には大きな被害をもたらす。このような場面においては、曝露証明のため、被害者の生体試料から化学剤由来の化合物を検出することが必要である。しかし、化学剤本体は反応性が高く検出することは困難であるため、化学剤の分解物を検出することが重要となる。一方で、化学剤分解物は高極性化合物であり、また生体試料中では低濃度であることから分析は困難であった。そこで本研究では、LC-MS/MS 分析に適した誘導体化試薬を選択または合成し、化学剤分解物の誘導体化 LC-MS/MS 分析を行う。
昨年度は、既存の誘導体化試薬を利用した誘導体化 LC-MS/MS 法の検討を行った。検討の結果、びらん剤の一種である窒素マスタードの分解物（エタノールアミン類）について、ペンタフルオロベンゾイルクロリドを用いた誘導体化 LC-MS/MS 法を開発した。誘導体化を行うことで、一般的に用いられる逆相カラムを用いた分析が可能となり、以前開発したHILIC-MS/MS 法による分析と比較して保持時間の変動を減少させることが可能であった。また、HILIC-MS/MS 法と比較して感度の向上も確認された。この内容について、学会発表および論文投稿を行った(日本法中毒学会第 39 年会、J. Chromatogr. A 2020, 1625, 461306.)。
また、誘導体化がイオン化効率に与える影響を考察するため、物理化学的パラメータとイオン化効率の関係について多変量解析を行い、その内容について学会発表を行った（第 68 回質量分析総合討論会）。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エタノールアミン類の誘導体化 LC-MS/MS 法を開発したことで、初年度の目的は達成できたと言える。また、物理化学的パラメータとイオン化効率の関係について多変量解析を行ったことで、誘導体化がイオン化効率に与える影響が明らかとなり、この結果を次年度以降に活用することが可能となったため、研究は順調に進展しているといえる。
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| 今後の研究の推進方策 |
来年度以降は、穏やかな条件下、高収率で反応が進行することが知られている1-アシルイミダゾール型の試薬を中心に、新規に合成した誘導体化試薬を用いた誘導体化LC-MS/MS法の開発を進めていく予定である。1-アシルイミダゾール型構造を有する誘導体化試薬については、マスタードガス分解物の誘導体化 GC-MS 法に用いる例が報告されている。また、多様な 1-アシルイミダゾール型試薬をイミダゾールと酸塩化物、あるいはカルボニルジイミダゾールと酸から合成することが可能である。そこで、まずは上記の誘導体化試薬の構造を参考に、LC-MS/MS におけるイオン化効率を改善することが期待される官能基であるアルキルアミノ基 を導入して新規誘導体化試薬の設計及び合成を行い、誘導体化 LC-MS/MSにおける有用性を確認する。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
当該年度には2020年12月ホノルルで開催されるPacifichemに参加予定であったが、2021年12月に延期となったため、旅費及び学会参加費等について未使用となり、次年度使用額が発生した。これについては、次年度に当該学会の参加費等として使用、または翌年度分の助成金と合わせて計算化学用のソフトウェアの購入や消耗品費として使用する予定である。
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