研究代表者はこれまでに、新規個人識別法の開発を目標として、皮膚微生物叢中に存在する真正細菌が保持するCRISPRに着目し、CRISPRのスペーサー配列を指標とした新規微生物叢解析法を構築してきた。前年度までに、レンサ球菌の保持するCRISPRが個人識別に有用であることを見出し、DNA抽出法の最適化を行った。さらに、皮膚スワブからDNAを抽出して次世代シーケンサーMiSeqによるレンサ球菌CRISPRの配列解析を実施し、ヒトDNA型検査でアレルが不検出になるなど、個人識別に十分な情報が得られない場合でも、CRISPRの配列情報が得られる可能性を示唆する結果を得た。 最終年度は、皮膚スワブから抽出したDNAを希釈することで、模擬的な超微量試料を作製し、これを試料としてレンサ球菌CRISPRの配列解析とヒトDNA型検査を実施し、結果の比較を行った。模擬超微量試料 (n=8) についてDNA型検査を実施したところ、8試料中6試料について、全ての座位でDNA型が不検出となり、個人識別に有用な情報が全く得られなかった。これらの6試料についてレンサ球菌CRISPRの配列解析を実施したところ、3試料において対照となる唾液試料と高い類似性(Bray-Curtis指数<0.8)を示す結果が得られた。この結果は、前年度までに示唆された、型検査で個人識別に十分な情報が得られない場合でも、CRISPRの配列情報により個人識別に有用な情報が得られる可能性を支持するものである。 本年度に得られた成果については第46回日本分子生物学会年会にて発表し、さらに論文として国際雑誌に投稿中である。
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