研究課題/領域番号 |
20K19010
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研究機関 | 東京医療保健大学 |
研究代表者 |
高橋 智子 東京医療保健大学, 看護学部, 准教授 (10717101)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 急性期看護 / 日常生活ケア / モデル構築 / 理論構築 / 実践的モデル |
研究実績の概要 |
本研究は、急性期にある患者の回復を導く日常生活ケアの実践的モデルの開発を目指し、研究者が作成した急性期看護における日常生活ケアモデルを実践で活用可能な知の形式へと発展させ、適用を試みることを目的としている。2022年度は急性期看護における日常生活ケアの概念および急性期看護における日常生活ケアの実践とそのアウトカムに関する国内外の文献検討した結果についてまとめ、学会で発表した。また、専門家会議を実施し、急性期看護における日常生活ケアモデルと文献検討の結果を比較検討して、急性期にある患者の回復を導く日常生活ケアの実践的モデルの試案を作成した。 作成した試案モデルでは、急性期看護における日常生活ケアモデルの構成概念について、抽象度の高い表現を見直し、具体化させた。〈患者の状況〉は看護師が捉えた日常生活ケアを生み出す先行要件であり、「心身が不安定で変化しやすい」「今の状況に向き合うようになる」などの5つから構成された。【日常生活ケアのアート】は、看護師がどのように日常生活ケアを実践しているのかを示し、「回復の程度を基準に照らし合わせ無理をさせない」「苦痛や制限に耐える心情を汲み、声をかけ触れる」などの8つから構成された。《その人の全体性への回復》は、日常生活ケアがもたらす反応や効果であり、「人間らしさを取り戻す」「自己を取り戻す」など6つから構成された。また、専門家とともに試案モデルの活用可能性を検討した結果、モデルを検証するためには日常生活行動に障害を受けやすい脳神経や循環器疾患の患者を対象とし、その事例をもとに試案の構成要素を再検討する必要があることが明らかとなった。 以上をふまえ、2023年度は修正した日常生活ケアモデルの試案について専門家会議を通じて再度検討した上で看護師へのインタビューを実施して、実用可能性について検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
今年度は日常生活ケアに関する英文献の検討および急性期看護における日常生活ケアとそのアウトカムに関する国内外の文献検討結果の公表および専門家の意見をふまえ、急性期にある患者の回復を導く要素を抽出し、急性期にある患者の回復を導く日常生活ケアの実践的モデルの試案を作成した。しかし、COVID-19の影響等により、授業内容および実習の対応等を要したため、本研究を実施するための十分な時間を確保できず遅れが生じた。また、感染拡大の影響により勤務環境等が変化し、内諾を得ていた看護師や専門家との会議開催が困難であり、さらなる遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は作成した急性期にある患者の回復を導く日常生活ケアの実践的モデルの試案について急性期看護の専門家と意見交換を実施し、試案の修正を行う。また、急性期看護に熟練した看護師へのインタビュー調査を実施し、急性期にある患者の回復を導く実践事例を語ってもらいモデルの活用可能性について検証する。インタビューは対面を予定しているが、対面での調整が困難な場合オンラインでの実施も検討する。 本研究に取り組む時間を確保するため、業務内容について見直し、調整するとともに書類整理等についてはアルバイト雇用も検討して対処する。また、専門家会議については、対面での調整が困難であった場合はオンライン会議も検討し、会議の機会を設けられるように対処する。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により、研究以外の業務を検討する時間の確保が必要であり研究に費やす時間の確保が困難であった。そのため、アルバイトの雇用やインタビューの実施が難しく、2022年度の人件費・謝金などの諸経費等が残額となり、次年度使用額が生じた。また、専門家会議については専門家の勤務の関係で無償で実施してもらえたため、人件費や交通費等が残額となり、次年度使用額が生じた。 2023年度は、専門家会議およびインタビューの実施、研究発表に向けた準備を予定しているため、郵送費・旅費・人件費等の諸経費を支出予定である。
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