本研究の目的は、看護基礎教育課程における看護学生の多職種連携実践能力の向上のための学習教材として、スマートフォンアプリケーションを活用した役割体験型の多職種連携学習教材「スマートナースリンケージ」の開発を行うことである。 2021年度までの研究で、看護基礎教育を行う大学を対象とした調査から、多職種連携に関する卒業時学習到達度や、学生に優先的に学ばせたい多職種連携の場面を明らかにした。その内容を踏まえ、教材開発のため、病院と協力し模擬カンファレンスの調整準備を行った。 最終年度において、模擬カンファレンスの実施、内容の分析と教材用の「退院支援カンファレンス」場面の台本を作成し、演者・監督に依頼、撮影を専門業者の支援下で実施した。撮影した動画をもとに、アプリで視聴可能なVR動画に編集し、役割体験可能なコンテンツとした。作成にあたり臨床看護師を対象にプレテストを行い、内容や視聴に問題がないか確認を行った。また、アプリのもう一つのコンテンツに、多職種(医師、薬剤師、歯科医師、理学療法士、社会福祉士、管理栄養士など全14職種)に関する知識(役割や活動内容を主とした)を内包したコンテンツの作成を行った。これにより学生はスマートフォンを用いて、自分が知りたい職種の知識を自由に学ぶことが可能である。作成したアプリを使用し、卒業年次の看護学生を対象に、開発したアプリを研究者のガイド下で使用してもらい、IPEに関する学習目標の自己評価および、IPWに向けての態度を明らかにした。調査の結果、役割体験型のアプリを用いたIPEは、IPE学習目標の自己評価の向上に有効であることが示唆され、IPWに向けての態度については、チーム連携による安全で質の高い医療の提供や、専門職者の仕事の熱意や興味に関する態度の醸成に有効であることが示唆された。今後は、明らかになった内容を踏まえ、更なる開発を継続する。
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