研究課題/領域番号 |
20K19019
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
麦田 裕子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 助教 (00804874)
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研究期間 (年度) |
2021-02-01 – 2024-03-31
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キーワード | 失禁関連皮膚炎 / 細菌 / 尿 / オムツ / ラット |
研究実績の概要 |
【背景】 失禁関連皮膚炎(incontinence-associated dermatitis, IAD)は激しい疼痛や掻痒感から患者のquality of lifeを低下させるため予防が重要である。IADの発生・悪化の主要因は細菌・真菌が尿素を分解しアンモニアを発生することによる皮膚pH上昇であると考えられているが、近年、細菌が培養されないにも関わらず強い臭気を伴う尿はIAD発生に関連することが明らかになった。これより、尿培養では検出されない尿中細菌・真菌が存在し、その細菌・真菌の分泌酵素や代謝産物を含む尿がIAD発生に寄与していると仮説を立てた。本研究の目的は、細菌・真菌による尿の成分変化がIAD発生をもたらすという新規メカニズムの解明、および尿中細菌真菌叢と尿成分の変化に着目した新たな予防ケアの開発である。 【本年度実施内容】 本研究は臨床調査(実態調査)と、動物実験(ラットIADモデルにおけるメカニズム解明)実験より構成される。このうち動物実験について、細菌含有人工尿によりIAD様所見を発生するラットモデルを作製するための条件検討を行った。 具体的に検討した条件は、ラット週齢、皮膚前処理条件(sodium dodecyl sulfate (SDS)の濃度、処理時間、処理頻度)であり、IAD作製処理(細菌含有人工尿を含ませたパッド片の貼付)によりIAD様所見を呈する条件を探索した。 現状、ラット週齢は10週齢を用いることでモデルが安定化すること、また、皮膚前処理条件は5% SDS含有アガロースゲルを1時間貼付するという処理を3日間連続実施することで皮膚洗浄に伴う皮膚バリア機能の低下が再現できることが確認された。ただし、皮膚前処理に5% SDSを用いた場合、皮膚前処理のみでIAD様所見(発赤)が生じる場合があるため、より低濃度のSDSを用いる必要があり、最適な濃度を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の当初計画に含まれていた内容として、失禁を有しオムツを使用している高齢者を対象とした横断観察研究があるが、COIVD-19の関係で臨床調査が実施できなかったため、「遅れている」の区分にした。 臨床現場以外で実施可能な検討として、in vivo実験としてラットモデル確立に向けた検証を行った。
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今後の研究の推進方策 |
臨床調査にてIAD患者と非IAD患者の尿サンプル中の細菌真菌叢の特徴および代謝産物を同定する実態調査を予定している。 また、並行して動物モデルを用いたin vivo実験を行う。具体的には、尿中細菌として報告される代表的な細菌を用いた細菌含有尿にて作製したラットIADモデルにおいて、細菌含有尿と代謝産物によるIAD発生のメカニズム解明を予定する。臨床調査の結果、IAD発生に関連のある細菌真菌叢および代謝産物が同定された場合は、それら細菌真菌叢および代謝産物を用いてラットモデルにおけるIAD作製処理を行い、メカニズム解明を予定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた臨床調査が、COVID-19流行の影響により実施できず、臨床調査実施およびサンプル解析分として確保していた研究費が未使用となったため。
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