看護業務量調査の手法を音声入力へ変更するため、使用する音声入力デバイス、並びに業務可視化アプリケーションの検討とともに、導線分析のためのシステムを検討した。 特に、医療機関で使用する音声入力デバイスではノイズの処理、入力者以外の音声の制御方法、個人情報の取り扱い、音声情報並びにテキスト情報の取り扱いなどの倫理的側面についての課題が抽出できた。 業務可視化アプリケーションについては、試作段階まで進んでいるが、現場のニーズとの十分なすり合わせまでは至ることができなかった。ダッシュボード機能を活用して看護マネジメントに活用する方向性を再度検討する必要がある。 また、構築したシステムを運用するための看護現場の実態を調査したが、ICTに関する知識の不足などを問題ととらえている看護職員が多いことが明らかとなった。諸外国では、情報担当看護師の育成については明確なプログラムが存在し、また役割についてもある程度明文化されたものが存在するものの、国内ではそのような取り組みがいまだ実践されておらず、そのため情報担当看護師の役割を担っても十分に役割を果たせていないと考える要因にもなっていると考える。 今後構築した業務改善システムを実運用するためには、役割の明確化と必要とされる能力を提示し、その獲得を促す教育プログラムの構築も不可欠であると考える。 一方で、情報担当看護師を配置している施設では、看護マネジメント上の効果を実感している施設もあり、今後看護DXを全国的に推進していくためには、このような事例を増やしていくことも必要であると考える。このような組織文化が醸成できれば、本研究で取り組んでいる業務の可視化に向けたシステム運用が有効に機能すると考えられる。
|